究極の語学学習法!

f:id:alicewithdinah:20161129180531p:image

 

最近ふとした思い付きで、

iphoneの言語設定をフランス語にしてみた。

ipod touchの使用歴が長めだったので

通知の種類や操作に慣れていたこともあって

iphoneに機種変更した際も

言語設定を英語にしてみたことはあった。

そういえば初めて持った「ガラケー」も

けっこう長い間同じ機種を使うことになって

飽きてしまったときに

言語設定を英語にしてみた記憶がある。

 

f:id:alicewithdinah:20161129180558j:image

 

言語設定をフランス語にしてみたときの

インスタグラムの通知はこんな感じになった。

 

使い慣れたiphoneがちょっとおしゃれになった。

もともとiphoneの様々な初期設定からあるアプリは

いつのバージョンでもシンプルで洗練されているので

フランス語の文字がもつ雰囲気も似合っている気がする。

 

「選択した写真を削除する」「アプリを評価しますか?」

などといったタブや通知には、

まだ習っていない単語なんかもたくさん登場する。

使い慣れて、タップすべき場所がわかるからこそ

この思い付きは思いついたまま続けられる。

 

ガラケー」を英語で使うようになったときに

気が付いたことだけれど、

普段目にするものに外国語を取り入れると

けっこう単語の勉強になる。

 

メール作成の画面に出てきた「Undo」なんかも

携帯電話で出会った単語となった。

今でこそ世界中のアプリが使えるようになって

どんな言語設定にしていても

英語しか使えないアプリもあるから

それを使ううちに知らず知らずのうちに

いい語学学習になっているのかも。

 

言語設定をフランス語にしてみて

まず役立ったのは曜日のスペル!!

何度確認してもなかなか覚えられなかったけど

ロック画面で必ずその日の曜日が表示されるから

一日で何度も目にするうちに覚えちゃう。

曜日の他にも今まで日本語だった通知の

内容を覚えていれば、なんとなく

単語が頭に入ってくるようになった。

ゴミ箱に入れた写真を完全削除したいのに

間違えて全部復活させてしまうという

小さな失敗をしながらだけど、楽しい。

 

 

f:id:alicewithdinah:20161129180639p:image

iphoneでは自分の好きな国の

キーボードも追加できるので

私はもともと設定されてた日本語と英語に

フランス語も追加してみた。

フランス語ならではの文字も打てるので

授業での課題作文もやりやすくなった。

 

4月から始めたフランス語の勉強が続いている。

講義も前期と変わらず週三回とっている。

分かり易い文法の説明はもちろん

フランスの文化に触れながら

授業を進めてくれる先生がおもしろくて、

一緒に授業を受けているみんなも

(ほとんど一年生)一年生の時の私を横に並べて

私をぱちんと叩きたくなるくらい

きちんと授業を聞いていて勉強している。

これなら早起きも続けられる!楽しい!

という感じの日々を過ごしている。

 

楽しい講義に出会えてよかったなあ。

 

関連記事

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

『オケ老人!』デート

f:id:alicewithdinah:20161126104248j:image

 

公開をずっとずっと待ち望んでいた映画

『オケ老人!』。

11月の初めに映画館で楽しんだ

溺れるナイフ』と同じく、

上映している映画館が少なかったので

なかなか気軽に観に行けずやきもきしたけれど

なんとか念願かなって観に行くことができた。

 

映画『オケ老人!』公式サイト

 

f:id:alicewithdinah:20161126114421j:image

 

杏さん演じる高校の数学教師・小山千鶴が梅が岡高校に赴任してきた。地域のオーケストラの演奏を聴いて、学生時代を思い出す。「また音楽やりたい!」という思いで問い合わせて入団したオーケストラは、先日聴いたオーケストラじゃなくて、老人だらけのダメダメオーケストラだった…!?

 

というあらすじ。

 

f:id:alicewithdinah:20161126114246j:image

 

昨年の年末に読んだ原作小説では主人公が男性の教師だったので、映画化で女性が主人公になるとどうなるんだろうと思っていたけれど、映画で描かれる「小山千鶴」はさっぱりしたコミカルな女性だったのですんなりと映画の世界に入ることができた。

 

あわせて先日に杏さんのエッセイ『杏の気分ほろほろ』を読んで『オケ老人!』の撮影現場を少しのぞき見させてもらっていた。「セリフをすべてノートに書き写す」「関連書籍をどんどん読む」「習い事をして少しでも演じる人物像に近づく」などどんな仕事が来ても入念に準備する、しかもその努力を大変なものだと思わず楽しむ杏さんなので、今回の映画ではどんな姿が見られるのかがとても楽しみだったのだ。

「老人」のみなさんは、笹野高史さんらベテランの俳優陣で固められていて、現役時代の長い皆さんは終始パワフルで撮影現場は楽しかったという。

 

f:id:alicewithdinah:20161126114303j:image 

 

そんな『オケ老人!』、とってもとっても面白かった。

 

老人だらけのオーケストラときいて想像されるのは、「いつどのメンバーが欠けるかわからない」ということ。もうこの世にいなくなってしまって欠ける、という意味。でも映画では、そういった高齢者を取り巻く環境を湿っぽく描くことはしておらず、老いを楽しむような、コミカルな雰囲気で描かれていた。「棺オケじゃないぞ!」と。隣にいた人もくすりと笑う。たまに声を立ててけたけた笑ってくれた。

 

f:id:alicewithdinah:20161126114313j:image

 

原作小説がある映画を観に行く際はいつも読み返してから行くけれど、私はそれをすっかり忘れていた。だから、「こんな場面あったっけ(あ、あったわ…)」と驚くと同時に、感動してちょっとうるうるしちゃうとこもあった。けして湿っぽくはなってないからね。

 

劇中で扱った作品も<威風堂々><新世界より><田園(第九)>など、普段クラシック音楽を聴かない人でも親しみのある作品ばかり。とくに<新世界より>二楽章は、「とーおきーやーまにーひーはおーちてー」でおなじみ、私が通っていた高校でも完全下校の時間の少し前になると校内放送で鳴り響くあの曲だ。

 

f:id:alicewithdinah:20161126114334j:image

 

同じ作品でも、演奏者によって演奏のすがたは変わる。たとえばテクニックを追い求める若者からは背伸びした印象または元気な印象が、恋に悩みぬいた経験があれば短調の曲に深みが出、そして人生を長く生きてきた老人が奏でる音楽にはその人生が凝縮された響きが出てくる。

久しく楽器を触らず、私が忘れていたその感覚を『オケ老人!』は思い出させてくれた。悲しいことも怒ったこともあとになって笑い飛ばせるようになるように、今を含めてこれからの経験が人生をつくってゆくけれど、年老いたときなにかまた楽器をやってみたいと思うんだろうな。そのときどんな音楽を奏でられるようになっているだろうか。

 

f:id:alicewithdinah:20161126114621j:image

 

先月、学園祭のステージで、「デートでオケ老人を観に行きたいでーす!」なんて言ってしまった。(その話はまたいつか…今温めています。写真はたぶんそれをちょうど言ってる時です)さて、誰と行こうか…と思って映画の公式ホームページを眺めていて、まっさきに浮かんできたのが祖母の顔だった。

 

祖母と一緒に最後に映画を観たのは、いつかのお正月に『ハウルの動く城』をスクリーンで観たときだった。お年玉の使い道が貯金しかまだ思いつかなかった私を、祖母はトイザらスに連れてってくれて「すきなの選びなさい」と言ってくれた。結局その時は人生ゲームを買ったんだった。そのあと映画を観たんだった。

 

f:id:alicewithdinah:20161126114346j:image

 

『オケ老人!』は家族と観に行っても楽しめる作品だと思う。だから祖母との久しぶりの「映画デート」に、私は『オケ老人!』を選ぶことにした。「ごちそうさんの杏も、とと姉ちゃんの”星野さん”も出るよー!」「さっきポスターを見たけど、星野さんいた?」「前髪あがってないからわからないかもね」なんて会話しながら一番後ろの席に座った。

 

大好きな杏さんが出る映画だったこと、しかも題材が普段から親しんでいるクラシック音楽だったこと、そして隣で祖母が観ているということ。とても楽しくて幸せな時間だった。

 

おまけ・『オケ老人!をもっと楽しむヒント

・「五つ子ちゃん」シリーズの楠のおばあちゃん

・「オランジーナ」のCMを見返してみる

・「くら寿司」に行ってみる

 

f:id:alicewithdinah:20161126114400j:image

 

最後に・関連記事

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

『溺れるナイフ』

f:id:alicewithdinah:20161109223529j:image

 

ずっとサシでランチしたいね、と言ってた友人と映画を観に行った。肝心なランチはフードコートですませて、これから始まるドキドキの2時間をひたすら楽しみにふたりで待った。

 

溺れるナイフ

 

 「溺れるナイフ」特別映像 - YouTube

 

「溺れるナイフ」特別映像2 - YouTube

 

都会から田舎に越してきた中学生の人気モデル・夏芽と、引っ越し先の街の神主の跡取り息子・コウの出会いのシーン、ふたりは水中にいた。

 

タイトルが画面に映し出され、小松菜奈さん演じる夏芽がぼそぼそと喋る。転調が繰り返されて不思議な気持ちになる音楽が後ろで流れてる。

 

菅田将暉さん演じるコウが夏芽の心を乱すとき、流れている曲も転調が繰り返されている。ピアノで演奏されるアルペジオが行き先もなくうようよとうごめいて、足の速いコウを夏芽が追うさまが浮かんでくる。

 

f:id:alicewithdinah:20161110100023j:image

 

水中のシーン…

夏芽と同じくらいの年齢のとき、大好きだったアーバンギャルドのMVを思い出してしまう。

 

 f:id:alicewithdinah:20161110201348j:image

 

そしてこのコントラスト。

金髪、黒髪、制服。

 

f:id:alicewithdinah:20161110201421j:image

 

2007年に大ヒットした映画

『恋空』を思い出さずにはいられない。

 

f:id:alicewithdinah:20161110201523p:image

 

f:id:alicewithdinah:20161110201615p:image

 

壁ドン、顎クイ、ですっかり浸透した人気の「ドSキャラ」ではないけれど、優しくなったり冷たくなったりする金髪の男の子に翻弄されている黒髪ロングヘアの女の子。

 

f:id:alicewithdinah:20161110201836j:image

 

今年は『ちはやふる』『君の名は。』で大活躍した上白石萌音さん演じる「高校デビューした」カナ。

 

f:id:alicewithdinah:20161110201842j:image

 

これもまたどうしても『恋空』の優を思い出してしまう、夏芽に優しい、重岡大毅さん演じる大友。

 

溺れるナイフ』の物語に、ふたりの存在も欠かせなかった。

 

 

「10代の危うかった時代の全能感」というものを、この作品は表現していた。

 

田舎に越してきたけれど、カメラマンに目をつけられて映画に出ることになりそうだ。でも、コウちゃんがいる田舎は楽しい。

 

「私がどうするかは、コウちゃんが決めてよ」

 

「好きな人」を超えて「神」のコウちゃんにきかないと、この先の人生が決められない15歳。

 

「お前は面倒くさいから、もう関わんな」

 

この言葉が高校生の口から発せられることに、どれくらいの本音が隠されているのか。感情に身を任せて放っただけの言葉だとしても、言われたほうはすべてが面倒になるくらい落ち込む。

 

f:id:alicewithdinah:20161110202613j:image

 

キラキラした中学生だったのに、ある出来事がきっかけで高校生になったらすっかり野暮ったくなってしまった夏芽だった。

 

 

f:id:alicewithdinah:20161110202851j:image

f:id:alicewithdinah:20161111104622j:image

 

原作は読んだことがなかったのに、キャストとあらすじが発表されたとき「小松菜奈も、菅田将暉もぴったりだ、やっぱりね」と思った。

 

ふたりとも役作りをしなくても、きっと原作の雰囲気に合ってると思ったのだ。とても映画が楽しみだった。

 

太眉ブームがくる前から、小松菜奈さんを中学生雑誌などでみてきた。眉と、透明感が印象的なモデルさんだと思っていた。それが近年映画で活躍するようになって、『溺れるナイフ』では私が印象的だと思っていた部分がしっかり「中学生」と「高校生」で演じ分けられていて、すごいんだなあと感じた。

 

そして、コウがクラスの中で自由人として一目置かれてはいるものの、けして「モテ男」として描かれてはいなかった。モテモテの男の子が雰囲気が正反対の女の子に恋をする…よくある少女漫画の、夢のあるあの感じと違う。

 

世の中のことをなんにも知らなかった(今もそんなに知らないかもしれないけど)、衝動でなんでもできそうな気がしてた10代の季節はもう終わってしまった。だからひたすら懐かしい気持ちで私はスクリーンを見つめていた。隣で観ていた友人もそうだった。

 

「私、夏芽たちと同じくらいの年齢のときに観てたらもっと遠い世界に感じちゃってたかも」と友人がいう。私がもし15歳の時に観ていたら…うーん、なんだか、すごく影響を受けてしまいそうだった。

 

「もし自分が夏芽だったら、コウちゃんのこと好きになってた?」なんて質問をしあうのも楽しい。ひとりでじっくり浸るもよし、女友達と観た後にワイワイ盛り上がるのもよしだ。

 

映画館には私たちより下の世代と思われるような女の子たちが沢山いた。彼女たちは『溺れるナイフ』を観て、何を思ったろう。早足で私たちを追い抜いた二人組は、「いやー最後全然意味わかんなかったわ」と言ってた。

 

今、10代を終えてからこうして落ち着いて観に来ることが出来て私はよかった。そうじゃなきゃなんだか危険だった。

 

そして、監督を手がけた若い女性の山戸結希さん、山戸さんの表現したかった世界観を全力で再現した俳優陣が同じ時代に活躍していてよかった。山戸さんは雑誌のインタビューで、「映画を観て、こんなんじゃだめだ、私ならもっと『溺れるナイフ』をうまく撮れる、と思ってくれる人が沢山現れたら私は嬉しい」と話していた。

 

 15歳の頃といえば、ちょうどAKB48がとっても売れ出していて、ねもうすと書いて「神(ネ申)」という言葉がDVDのタイトルにつけられていた。「神対応」とか、「神キター」みたいな言葉もよく聞いた。

 

先生や親の言うことに反発したくなったり、大人ではないけれど子どもでもなくなってきたかもしれない…とひとり悩んだりする季節には、「私の神さん」が必要だったのかもしれない。

 

f:id:alicewithdinah:20161110205728j:image

 

2013年、ドコモのCMに出演した小松菜奈さんを見て、当時から『溺れるナイフ』の原作のファンだった人びとの中で「実写版の夏芽がいる!」と話題になっていたらしい。CMを観てから映画を観ると、遊び心が感じられる瞬間が必ずあると思う。危険な映画だ、なんて言ってしまったけれど、美しくもクスッと笑えるところもあるよ。

 

私の住む新潟では県内で2箇所しか上映していないレアな映画だが(もっと色んなところでやればいいのに!)、ぜひスクリーンで楽しんでほしい作品だった。

 

 

関連・参考記事

(ネタバレ含む、鋭い考察)

溺れるナイフ - 神様を得た15歳 - - こみねもすなるだいありー

 

アーバンギャルドPV)

 [MV] アーバンギャルド「ワンピース心中」 - YouTube

 

小松菜奈NAVERまとめ)

小松菜奈で『溺れるナイフ』映画化!3年前のCMがリアルにソレだった - NAVER まとめ

累計3万アクセス

f:id:alicewithdinah:20161109203804j:image

 

本当は次の記事を更新してから

このことを書こうと思ったのですが…

 

書き渋ってる間にいつの間にか

アクセスカウンタが30000を超えてました。

 

2014年、大学1年の秋にこのブログを作って

現在まる2年と少しが経ちました。

更新しまくる時期があったり

まったく書かなくなったり、

習慣的なものを試みたり失敗したり…

気まぐれに続いてきたブログですが

こんなにたくさんの人に

見てもらえるようになるとは!!

 

今年は本に加えて映画も沢山観るように。

「本も映画も、感想楽しみにしてるよ」と

読んでくれてる人に声をかけてもらったりと

確実に誰かにここに書いていることが

届いているんだなと実感する瞬間があります。

 

文章を読むのも書くのも

どんどん好きになってきています。

読んでくれて本当にうれしいです。

いつも、ありがとうございます。

 

これからもささやかなことたちを

のんびり書いていきたいと思います。

やっているSNSにも通知を出します。

のんびりお付き合いしていただけたら

とてもうれしいです。

 

これからも「謎の国のありす」を

よろしくお願いします!

 

 

次回は映画『溺れるナイフ』を

観てきたことを書きたいと思ってます。

すごい映画だったので

なかなか書き渋ってます。

 

ありす

ジョゼと虎と魚たち

f:id:alicewithdinah:20161103195832j:image

 

ジャケ買いがきっかけで『孤独な夜のココア』に出会ってからすっかり、田辺聖子さんの描く女の人の物語が大好きになってしまった。

 

日記を書くとなるとなかなか続かない。でも、ちょっとしたお出かけに本をおともすれば、あとでその本をもう一度開いたときに、はじめてその本を読んだときの場所とか空気とか、そういったものが親しみのこもった思い出のように浮かんでくる。私にとって部屋の隅に積まれた文庫本たちは、日記帳のように少し昔を思い出す大切なヒントだ。

 

『孤独な夜のココア』にもそんな思い出が詰まっている一冊だった。母と旅した夏の松本。うとうとしながら乗ったワイドビューしなのからの景色が未だにやきつく。

 

f:id:alicewithdinah:20161103203006j:image

 

『おちくぼ姫』も『源氏物語』も、田辺聖子さんの作品・現代訳した作品はとても気になる存在で、この冬にでも読みたいと思っている。

 

本が好きな友人から、「田辺聖子さんの『ジョゼと虎と魚たち』、ありすちゃんきっと好きだと思うからぜひ読んでほしい」とおすすめしてもらった。

 

 

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

 

 

身体が不自由な「ジョゼ」と男子大学生の不思議な恋の話のほか、チャーミングな女の人が主人公の短編が詰まった一冊だった。

 

白粉(おしろい)がうまく肌にのったり、晴れた日に新調の靴をおろしてはいたり、碾茶(ひきちゃ)ごはんをほめられたりすると、梢はかなりそれだけで人生が満たされた気がする。

 

宇禰は仕事にも車を使うので、ふだんからその小さい赤い車には、穿きかえの靴や、ちょっとひっかけるセーターなど入れている。もうかなり長く乗っているが、馴れた車で、宇禰はひそかにこの車を、「私のオルゴール」と呼んでいた。オルゴールの函ほどに小さいが、この密室にいる時間も好きだった。

 

(不機嫌というのは、男と女が共に棲んでいる場合、ひとつっきりしかない椅子なのよ……)(どっちか先にそこに坐ってしまったら、あとは立っていなければならない椅子とり遊び。自分が坐っちゃいけないのよ)

 

主人公たちの見かけはどうであれ、様々であるけれど、ああもう少し歳を重ねたらこういう人になりたいな、こういう考え方をしたいと思わせてしまう人たちだ。

 

そして、表題作「ジョゼと虎と魚たち

 

「夢に見そうに怖い……」「そんなに怖いのやったら、何で見たいねん」「一ばん怖いものを見たかったんや。好きな男の人が出来たときに。怖うてもすがれるから。……そんな人が出来たら虎見たい、と思てた。もし出来へんかったら一生、ほんものの虎は見られへん。それでもしょうないと思うてたんや」

 

ジョゼはそのままでいいと思っている。長いことかかって料理をつくり、上手に味付けをして恒夫に食べさせ、ゆっくりと洗濯をして恒夫を身ぎれいに世話したりする。お金を大事に貯め、一年に一ぺんこんな旅に出る。

 

ジョゼの名前はどこから来たのか、ジョゼと恒夫(男子大学生)の「こんな旅」ってどんな旅なのか。これは、ぜひ読んで確かめてもらいたい。

 

そうそう、この関西弁や。

 

田辺聖子さんの作品は大阪弁も京都弁も巧みで、登場人物たちが繰り広げる会話が小気味よいのだ。たとえその会話の内容が不倫であっても、ハイ・ミスとしてこれからも生きる将来を悟る言葉であっても。

 

だから銀行の窓口で、「山武羅紗(やまたけらしゃ)さあん」と呼ばれて「ハイ」と立ってゆく似和子を見るかぎり、「夢のように日が過ぎた」楽しみを、コックリと味わっている人生の中身は、誰にも分らないのであった。

 

 『孤独な夜のココア』にも『ジョゼと虎と魚たち』にも、どちらかというと描かれているのは男の人のカッコいいところ、頼れるところでなく、弱さを見せるところや甘えてくるところだ。田辺聖子さんはそういうところを可愛らしいと思って、ほなそう書いたろと思って書いているのかしら。同じく田辺聖子さんによって書かれる女の人たちも本当は弱いところもあるのだけれど、毅然として相手との関係を大切にしたり、誰にも見えないところで人生を充実させようときっぱりしているところがすてきだ。

 

表題作「ジョゼと虎と魚たち」は映画にもなっているという。そこには先月行われた、私が通う大学の学園祭にも来ていたらしい(!)、新井浩文さんが出ている。今楽しんで観ているドラマ「校閲ガール」でバリバリ仕事をこなす江口のりこさんも。「怒り」に出ていた池脇千鶴さん、妻夫木聡さん。上野樹里さん。

 

「キャストも豪華だし、ちょっと前の映画だけどきっと面白いからぜひ観てみて!」と友人が言っていた。あの短編が映像化されたらどうなるのか、原作を読んでみてとても気になる。近いうちに観てみたいと思う。

 

読書週間はまだまだ終わらない。

 

関連記事

 

孤独な夜のココア - 謎の国のありす

贈り物のネタバレ - 謎の国のありす

 

 

2017年の手帳三刀流!

f:id:alicewithdinah:20161101130742p:image

 

じゃん!これは来年の手帳たちである。

 

2017と書かれた手帳が店先に並び始めたころから私はさんざん悩んできたのだが、やっと最近出揃った。(よかった……)

 

今年の手帳は三刀流で今までやってきて、「ちょっと多かったかな」と思っていたのに結局来年も私は三刀流でやっていくようである。

 

2016年の手帳三刀流 - 謎の国のありす

 

↑今年使っている手帳の紹介。

 

 

①NOLTY U

(月間+週間レフトタイプ)

f:id:alicewithdinah:20161101130811j:image

 

・マンスリーページの枠が大きめ

・ウィークリーページは時間軸あり

・重すぎない

 

という3点を基準にして、メインとして使う手帳を探してきた。雑貨店や書店で実際にいろいろな手帳を見てみた。ある文具店で手に取った「NOLTY U」。なんだかいい予感がして中身を確認してみたら、

 

f:id:alicewithdinah:20161101130829j:image

 

f:id:alicewithdinah:20161101130846j:image

 

マンスリーページは午前午後、仕事とプライベートなど二段になっていて分けて書けるほどのゆったりとしたスペースがある。

ウィークリーページはドットと数字で時間軸が記され、毎日三行に分けて書けるようになっている。しかも、私はバーチカル(時間軸が縦にすすんでいくタイプ)よりもメイン手帳はレフト(上の写真にもあるとおり、時間軸が横にすすんでいくタイプ)がよかったので、ちょうどいい。

そして気になる重さは…軽い!近年ずっと使ってきたハードカバーではないこともあるけれど、カバンに入れてもそれほどかさばらない。重くならない。これなら今年のように映画の半券も貼れるだろうし、サイズもいつもより小さいので持ち運ぶカバンを選ばない。

 

表紙の色はピンクを選んだが、紺色と最後まで迷った。決め手は裏表紙の美しい青色!(紺色のほうの裏表紙は黄色だった)表紙を見れば気分が華やぐし、裏表紙を見れば落ち着くことが出来る。

 

来年は「NOLTY U」とともに中身の濃い1年を過ごしたいと思うし、それがとても楽しみだ。

 

 

②雑誌『MAQUIA』最新号付録

(月間+週間レフトタイプ?)

f:id:alicewithdinah:20161101130908j:image

 

2015年、2016年に続いて今年も神崎恵さんの手帳をサブ手帳にするつもりだった。2017年の手帳の表紙は、2016年と同じライラック色に加えて神崎さんの好きな色・ターコイズも発売された。

 

f:id:alicewithdinah:20161101144829j:image

 

こんなふうに、日々のすてきなことがらや忘れたくないこと、新しく知った情報なんかを丁寧に書き留めてきたつもりだったけれど、やっぱりこの使い方をしていくならこちらもバーチカルよりレフトのほうが良いのかもしれないな、と悩んでいた。

 

f:id:alicewithdinah:20161101130926j:image

 

そこで書店の雑誌コーナーで出会ってしまった『MAQUIA』の付録の手帳。美容情報誌ということもあり、付録の手帳の使い方を紹介するページに「食べた物を記録したり、美容手帳にも!」と書いてあった。

 

表紙の絵も可愛いし(この付録がついてくる最新号の表紙と中面のはじめの特集は、表紙の絵を小嶋陽菜さんと愛猫で実写化したものだった)中身の色合いも私の好きな優しい感じだった。

 

f:id:alicewithdinah:20161101130950j:image

 

猫のモチーフが散りばめられているウィークリーページはしっかりレフトタイプ。毎日のメモスペースは左右に分かれているから、左は食べたもの、右は1日の中でよかったことを書こうかな…なんて夢がふくらむ。

『MAQUIA』に載っているような、女性であることを楽しむ大人に近づいていけたらいい。

 

それからおすすめポイントがもうひとつ、ウィークリーページは10月24日から始まっているから今すぐ書き始められる。

 

 

ほぼ日手帳2017 カズン

(月間+週間バーチカル+1日1ページ)

f:id:alicewithdinah:20161101131038j:image

 

とうとう、踏み入れてしまった

「ほぼ日」の世界!

 

毎年秋になるとLOFTの店先でにぎやかなディスプレイとともにずらっと並ぶ「ほぼ日手帳」と関連グッズたち。ユーザーの数だけ使い方にも個性があって、そこからコミュニティが生まれる。関連グッズだって魅力的…いかんいかん、ふっと足を踏み入れたらなんだか抜け出せなくなってしまいそうだぁと思いながら売り場を後にしてきた。

 

「ほぼ日」本体が発売される少し前に、『ほぼ日手帳2017 公式ガイドブック』を書店で見かけた。インスタグラムの「#ほぼ日」「#ほぼ日一年生」タグでユーザーの使い方を見るのが好きだった。

 

公式ガイドブックでは、2017年の「ほぼ日」ラインナップとともに、さまざまなユーザーの使い方をのぞき見することができる。

 

カップルの交換日記、子育ての記録…などなどが紹介されたページをめくってゆくと、現役大学生による「就活ノートとしてのほぼ日の使い方」が載っているのが目に留まった。

 

就活をするにあたって、自己分析や企業研究、受講したセミナーの内容をまとめる…などやることがいくつもある。「就活ノート」にひとまとめにしておけば、情報を呼び出すのが簡単だとその人は読者に教えてくれた。

 

私にもそういうノートは必要だよなと思っていたが、分厚いノートを用意したり自分でカスタマイズするのは難しい。

 

長く沢山の人に愛されてきた「ほぼ日」 は1日1ページと書ける分量も然ることながら、見返しやすい工夫も沢山あるから就活ノート向きだと思う!

 

f:id:alicewithdinah:20161101131103j:image

 

f:id:alicewithdinah:20161101131121j:image

 

マンスリーもウィークリーもある。ウィークリーページの土日は平日に比べてスペースが小さい手帳も沢山あるが、「ほぼ日」はそんなことない。

 

f:id:alicewithdinah:20161101131140j:image

 

それから1日1ページのページがこちら!なんといっても方眼になっているとなにかと便利だし、それぞれのページの下部に言葉が書いてあるのもすてきだ。

 

「ほぼ日」シリーズには中身が全部英語、表紙はシックな黒に金色の文字で「手帳」と書いてあるものもある。そのタイプはページの下部の言葉も英語なのでデザイン重視で使いたい人や、英語を勉強している人にもぴったり。

 

マンスリーページには何を書いて、ウィークリーには何を書いて…と具体的にどのように就活ノートとして使っていこうかはまだ決まってないけれど、書き始めは来年だからもう少し熟考できそうだ。

 

 

すべて出揃った。

f:id:alicewithdinah:20161102122240p:image

 

2017年は機能的に納得のいく手帳を使いたい…という思いでとにかくいろいろな手帳を見てきた。来年はこの手帳たちと過ごしていく。

 

そして、2016年の三刀流も忘れてはいけない。残りのページもしっかり使っていきたいと思う。

 

関連記事

 

2016年の手帳三刀流 - 謎の国のありす

 手帳3刀流のその後 - 謎の国のありす

来年の友達さがし - 謎の国のありす

親切なディスカヴァー手帳 - 謎の国のありす

 

 

杏の気分ほろほろ

f:id:alicewithdinah:20161031191055j:image

 

そろそろストーブを出そうか、お風呂上がりには暖かい靴下をはくべきか、出かけるときはもう冬用のコートが必要か。冬を乗り越えるための工夫ひとつひとつの凝らしどころにタイミングのよしあし(これは風邪をひくかひかないかにもかかっている!)が問われる時期になった。

 

紅葉が見頃ですとニュースが伝える。

 

好きな、チャットモンチーの7〜10年前のシングルを順番にみんな聴いてしまってもまだまだ読書の時間には足らない。恋の煙から染まるよ、ラストラブレターが耳元をすり抜けてゆく。

 

10月27日から11月9日までが読書週間だと聞いたので、いつも変わらず読んでるくせに「本、読まなきゃ」と改めて意識をする。

 

そんなとき、

心待ちにしていたエッセイが発売された。

 

 

杏の気分ほろほろ

杏の気分ほろほろ

 

 

 

杏 著 『杏の気分ほろほろ』

 

朝ドラ「ごちそうさん」から、公開を間もなくにひかえる「オケ老人!」まで、杏さんの仕事に対する姿勢や新しい家族についてが、杏さんの優しい言葉で綴られた一冊。

 

「かなしい」という言葉は、古語では「愛しい」とも表記する。悲しみ、怒り。それら負の感情は、愛とか慈しみとか、正の感情があるからこそ生じる表裏一体のものなのかもしれない、と思う。

 

何かを演じていると時に、涙を流すことを求められる。役者たちは何を思って涙を流しているのか気になっていた私に、杏さんはヒントを与えてくれる。

 

「でもさ、自分の元に仕事が来たってことは、自分と仕事をしてみたいっていう想いを持った人がいるってことだよね」

 

これは杏さんがモデルだけでなく女優の仕事を引き受けることについて迷っていたころに、福山雅治さんとの対談で頂いた言葉だそうだ。

 

「杏の気分ほろほろ」に書かれているのは2013年から現在。幽霊、北条政子、大正から昭和の時代を生きため以子、銀行員の花咲舞、理系をきわめた依子、そして指揮者とヴァイオリン弾き…多忙な中でどの役にも入念な準備をして挑んでいる杏さんの姿勢は、見ていてこちらもしゃんとする。

 

台本は全て手書きでノートに書き写して髪を乾かしながら覚える。細長い、珍しい手指をしていると手先の吹き替えが用意できないため、使い慣れない和包丁も自分の手とともにカメラに映らなければならなくなった。そこで大阪の鍛冶屋の街・堺を訪れ自分の和包丁を作ってもらって練習したという。

 

古きよきを大切にしながら、人生で出会う新しいことに素直に飛び込み、今後の自分の糧にしていく…。そこで出会う人たちも大切にする。

 

前作『杏のふむふむ』ももちろん面白かったけれど、『杏の気分ほろほろ』を読んでいて一番顔がほころんでしまったのは東出昌大さんとのこと。

 

ごちそうさん」の撮影で10ヶ月の大阪生活をしている時、撮影の合間を縫って二人で淀川にウナギ釣りをしに行ったとか。 結婚式で着ていた白無垢は、モデルとして毎年参加してきた「ファッション・カンタータ」で身に纏っていた衣装のブランドの人が作ってくれたという。

 

つい「ごちそうさん」の思い入れのあるシーンの記述や杏さんのおじいさん・おばあさんとのことについて書かれた文章を見てうるうるっときてしまった。

 

f:id:alicewithdinah:20161031220031j:image

 

子育てをしていると、几帳面な依子や料理好きなめ以子など、かつて演じてきた役たちが顔を出すという。SNSをしている芸能人も多いなか、SNSをしていない杏さんの今を教えてくれるのはラジオや雑誌の連載(『杏の気分ほろほろ』は朝日新聞デジタルの連載を加筆して書籍したもの)くらいである。

 

それでもこうしてエッセイを読んでいて、「ああ、あの作品のあのシーンにはこういうエピソードがあったんだ!」「出刃包丁の名前の由来って、やっぱりそうだったんだ…」と新しくしることにふむふむとうなずいたり、くすっと笑える瞬間がある。杏さんの文章を楽しみにしてきてよかったといつも思う。

 

空気が冷たくなり、ますます朝や晩に暖がかかせない季節がやってくる。そんなときにそっと寄り添ってくれる一冊だ。

 

関連記事

 

「モデルは主役ではなくて、1つのピースだと思うんです」 - 謎の国のありす

 

「モデルは主役ではなくて、1つのピースだと思うんです」 - 謎の国のありす