『沈黙』

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この世界の片隅に』に続いて

ぼうっと観てはいられない作品を。

 

遠藤周作が原作を書いた『沈黙』。

スコセッシ監督がハリウッド映画にして

世界でこの物語が公開されることとなった。

 

ポルトガルの宣教師が、

キリシタンを弾圧する日本の地に踏み入れた。

彼らには、囁かれている

先輩の宣教師がキリスト教を棄教したとの噂の

真相を確かめるという目的があったーー。

 

映画の始まりって、音楽が流れたり

主人公の生活音なんかがしたりするものだけど

『沈黙』はただひたすらに静寂の中、

虫の声、葉が擦れる音がするだけだった。

『沈黙』というそのタイトルの通り

BGMらしいBGMはこの映画に似合わない。

 

『沈黙』というタイトルを監督がどう解釈して

映画を作るのに組み込んだか、

また、物語にとっての「沈黙」は

どのようなことを意味するのか…

一度目でなぞっておわり、ではなかなか

自分の中で考えが解決しない。

スコセッシ監督なりの解釈や、

役者それぞれなりの解釈があって

物語が映画として完成して成り立つように

映画を観る私たちそれぞれも

解釈の仕方があると思った。

 

主人公の宣教師・ロドリゴは、

どんなに祈っても神は答えてくれないと憂う。

島の荒地の上空を飛ぶ鳥を見て

あれもまた神の使い(正しい表現は失念)

だ、と頬をほころばせる。対して

日本ではすべての自然のものが仏だという

考えかたが広まっていて、

BGMのように映画のはじめと終わりを

覆っていた虫の声だって、

アニミズムに基づく演出だったかもしれない。

 

人の心は終始それぞれの思いに燃えており

争点となった信仰自体はそれぞれ

とても静かなものだった。

 

普段生活していて信仰については

なかなか話題にのぼるものではないけれど

スクリーンを見つめる2時間半、

信仰を「自分の信念」や

「なくてはならないもの」なんかに置き換えて

もし自分にとってのそういうものが

自分の暮らす場所や、わかってほしい相手に

受け入れられなかったら…という想像をした。

 

今の日本ではお正月もクリスマスもする。

これは、『沈黙』で描かれていた時代から

どのように変わった結果だろうか。

慣習や習慣が変わっただけで、

人の心はたいして

変わっていないかもしれないし。

 

『沈黙』では日本の俳優が何名も出演した。

特に学年が同じ小松菜奈さんが

この映画に出ているのは感慨深かった。

 

歴史の教科書で見た「踏み絵」が

実際どのように行われていたか…

踏み絵だけでないキリシタンのあぶり出しが

そこに描かれていた。

 

『沈黙』の原作もこれから読んでみようと

思ったし、これをきっかけにして今年は

歴史を描いた小説も読んで見たいと思う。

31から始めよう

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「ダイエットは明日から…」

「明日から本気だす!」

なんて、私もよく言うものだ。

 

日曜日の夜は次の日から始まる1週間が

まだ見えていなくて憂うし、

ベッドに潜って外が明るくなるまで

その先のことなんて考えたくなかったりする。

 

いっぽう、「明日やろうはばかやろう」

なーんて言葉もあった。

もちろんこっちの言葉のほうが

説得力があって、心に留めて行動するなら

こっちの言葉のほうがいさましい。

でも、明日の自分に期待と信頼を寄せるのは

分かっちゃいるけどやめられない。

 

最近はそうでもないけれど、

私には「月のはじめは笑い日ジンクス」

という厄介なものがあった。

毎月1日、新しく始まる1か月を

楽しみに迎えるのに、なんかついてない。

失敗ばかりの1日になりがちだ。

 

日曜日の夜は月曜日を憂うし、

31日の夜は明日からの1か月に

過剰に期待してしまうもの。

 

だからこそ、月曜日から続けたいことは

日曜日の夜から準備をすればいいし

1日から心がけたいことは

31日に心がける練習をしておく。

そしたら少しは憂う気持ちや

期待する気持ちも落ち着くかも…。

 

と思うので、2月の計画は今のうちに。

まずはたくさん水分をとって、

しっかり元気でいよう。

『この世界の片隅に』

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晩秋に温泉旅行をしたときに、

宿の近くにあって訪れた資料館の

喫茶スペースに佇んでいた柱に

「映画『この世界の片隅に』上映決定!」

というポスターが括り付けてあったのを見た。

アニメーション映画で、主人公の声は

のんさんが担当するという。

 

そのあともイオンシネマで『オケ老人!』

を鑑賞したとき、シネ・ウインドで

『黒い暴動♡』『聖なる呼吸』を鑑賞したとき

この世界の片隅に』の予告編を

見て気になっていた。

 

有難いことにシネ・ウインドで

1日に2回も3回も上映してくれている。

スケジュールを合わせて足を運ぶと

平日の午後の早い時間だというのに

ほとんどの席に人が座っている。

 

ひとつあけて隣に座っていた女性が

私と色違いの同じ形のカバンを持っていた。

同じのを持っていた人を見たことなくて

なんだか嬉しくて話しかけたくなったけれど

映画の雰囲気に浸る準備をしたいかもしれない

…と思ってグッとこらえた。

 

舞台は昭和はじめの頃の広島・呉。

主人公のすずさんはおっとり屋さん。

賛美歌のBGMが鳴って、物語の幕開けが

クリスマスシーズンだということが伝わる。

 

2時間を超える長さでスクリーンを見つめた。

言ってしまえば「戦争もの」の、物語。

でもこんなに映画館に鼻をすする音と

くすくす笑いの声が共存する不思議な空間には

いたことがなかったから驚いた。

 

「うちは、笑顔のいれもん」

すずさんは身の回りの環境がどんなに変わって

配給の品薄さが顕著になってきても

新しい環境に慣れようとしたり、

家族があっと驚く料理を提案したり。

人生を諦めないで過ごしているように感じた。

 

想像力は、人を幸せにも悲しくもさせるんだな

 

迫る敵機を撃ち落とす日本軍の砲弾、

堕ちる前に炎で光る飛行機を見て

とっさに紙に絵の具を塗りたくりたくなる

すずさんなのだった。

どんなに悲しいことがあっても、

おっとりしている間に言葉にするのを忘れても

絵を描いてそれを昇華してきたのがすずさん。

 

見てたくないけど見ていたい、

力づくで人を泣かせることはできるし、

感動させられることだってできる。

例えば心を掴むセリフだったり、

映画音楽的なメロディだったりで。

だけど、『この世界の片隅に』は

そういう姿勢とはどこか違っていた。

涙が出てくるとしたら、心がすっかり

しぼりとられてしまって出てくる感じで。

 

今この時代を生きている私たちも、

戦争を知らない父や母の世代も、

これから生まれてくる子どもたちも、

すずさんたちが若い頃を生きた時代とは

違う価値観や文明がそこにある。

 

でもこの映画で描かれる人々の気持ちは

私たちとそう変わらないし、

これが人の心だ…というふうに思った。

 

私は、小学校の頃学校の図書室で見つけた

マンガの本『はだしのゲン』に出会ったとき

大きいショックを受けてしまった。

衝撃の大きさとしては、卒業文集に

小学校の思い出を書くべきだったのに

戦争がどんなに恐ろしいか

書いてしまうくらい、だったのだ。

 

当然調べ学習でも戦争について調べた。

興味を示したのは前線ではなくて、

戦争中の人々の暮らしだった。

当時のネットで得られる情報は限られてたし

そのあと大学の講義で聞いた話も

とても想像ができたものでなかった。

 

でも、『この世界の片隅に』を観て

おっとりゆったりしたすずさんと一緒に

その時代を少しだけ味わうことができた。

 

 大学の先輩に映画を観てきた話をしたら

「あれさ、予告編観て結末がなんとなく

想像できちゃうからなんか辛いよ…」

と言われてしまって、私はネタバレを

するわけにはいかなかった。

私は結末を想像しないで観たけれど

受け止めることが出来たので、

あんまり結末についてはなんにも

考えないで観に行ってみてくださいねと

その先輩には伝えた、と思う。

 

しばらく、映画について書こうと思いつつ

思いが溢れそうになってしまってたので

こんなに遅くの公開になってしまった。

もうすぐシネ・ウインドでの上映は

終わりになってしまうけれど、

なにか映画観たいな〜と思ったらぜひ。

 

ちなみに、はじめの方に書いていた

色違いでお揃いのカバンを持っていた女性には

とうとう話しかけられはしなかった。

お互いひとりで来ていたし、

映画の余韻に浸る時間を邪魔しては

きっといけないなと思ったからだ。

でも、映画を観ていて少し心細い気持ちに

なったとき、隣の隣の人の膝に乗っている

カバンのうさぎ模様は私のと並んで

やっと仲間に再会できた、と嬉しそうだった。

私も少しだけ心強かった。

不安を因数分解する

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このブログではたびたび、

手帳を使って毎日をもっと楽しく

充実したものにしようと模索する過程を

振り返っては載せている。

 

毎年手帳はマンスリーとウィークリー

どちらのページもある、厚みのある

ものを選んで使ってきた。

今年はNOLTY Uを使用している。

ウィークリーページの時間軸や

「自己流・7つの習慣」を書くスペースが

あるおかげで、今年の手帳は今までよりも

書き込みも多くてにぎやかに使っている。

 

その日、眠りにつくまでに終えたい

7つのことを何でもいいから埋めるという

「自己流・7つの習慣」。

これはなかなか楽しくて、続いている。

だいたい夜になると、

「明日はこれをやろう」という項目が

7個中半数くらい見つかってくるので

あらかじめ書いておいて眠りにつく。

 

とくに、毎日少しずつやりたい部屋の掃除や

コツコツ書きたいブログなど、

習慣づけたいタスクはすすんで記入する。

 

些細なことも7つの中に入れるので

だから「今日は何しよう…やることないや」

と思う日が今までほとんどなかった。

 

しかし、今日はなんだかそうでなかった。

無防備にテスト期間を迎えてしまって

最近7つを超えてやるべきことがある日が

ずっと続いてしまったうえ、

あまり全てのタスクを達成できない日も

同じくらい続いてしまったのだ。

 

レポートのための作業や課題ばかりを

7つの中に沢山入れてしまうと、

身の回りのことがおろそかになってしまう。

そうすると作業や課題も気が乗らない…

毎日充実した気持ちで過ごすために

始めたことなのに、これでは

自分で自分の首をしめてしまっている…。

 

こう思うと、昨日の夜は今日のぶんの

タスクを考えることが出来ずにいた。

だから、「1.ブログを書く」のあとは

「2.不安を因数分解する」と書いて

潔く眠りについてしまうことにしたのだ。

 

朝起きて、身支度をしたあと手帳を広げる。

ブログは今日はこのことを書こうと決めたので

「1.」は後回しにすることに。

「2.」に取り掛かることにした。

 

ノートに、今不安に思っていることを

状況を併せてとりあえず箇条書きで書く。

ノートの見開きの左半分いっぱいになった。

 

人は悩みを誰かに打ち明けるときすでに、

自分の中で答えが見つかっている…という。

私も多分どうすればいいかわかっていて

うまく言葉にできなくてモヤついていることは

昨日の時点でわかっていた。

 

だから今度はノートの見開きの右半分に

矢印を引っ張って、左半分に書いたことに対し

自分で自分に反応と提案を書いていった。

 

期限が差し迫っているもの、

今すぐに考えなくてもいいもの、

今日のスケジュールを終えたらすぐに

考えるべきもの…いろいろ優先順位がある。

 

右半分も埋まったので、読み返して

「今日やるべきこと」はどれか…

7つ中2つがすでに埋まっているから、

5つをピックアップして丸をつける。

そしてそれを手帳に書き写して、

今日も「自己流・7つの習慣」が完成した!

 

不安を因数分解する…

言葉はやっぱり変かもしれないけれど、

格段に頭の中がすっきりするいい手順だった。

 

よーし、今日はこのブログも書けたし

7つのタスクをすべて終えて眠れるね。

こういう日が続くと、うれしいのだ。

江口寿史さんに似顔絵を描いてもらいました【後編】

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(前回のあらすじ)

 

14歳になりたての時、ひょんなことから

江口寿史さんの描く絵に出会う。

それはある小説の表紙だった。

江口寿史さんの描く女の子がとても魅力的で

有名人の似顔絵がいくつか描いてあるのを見て

「私もいつか似顔絵を描いてもらえたら

幸せだろうな」と思っていたところ、

なんと2017年の1月半ばに新潟で開かれる

江口さんの展覧会の初日に

似顔絵イベントが開催されることを知る。

応募して抽選の結果はなんと当選。

イベントが開催される1月14日まで

体調を崩さないことを誓う。

 

---------------

 

新聞に載った1週間分の天気予報を見て

私は思わずため息をついた。

「いや〜なんだよこれ…雪ばっかり」

成人式の日はあんなに晴れてたのに!

江口さんは果たして無事新潟に来られるのな?

遠方から見に来る人も大丈夫なのかな?

そして私は寒すぎて体調くずさないかな?

なんて、心配ごとが一気に増えた。

 

14日までの1週間は、正月太りも気にせず

スタミナをつけようと積極的にラーメンを食べ

夕食は鍋料理を食べ、日本酒を飲んだ。

あたたかい風呂に入り、無理せず休んだ。

 

でも、最後の最後、ヨガの映画を観に行った後

どうしても身体を伸ばしたいと思って

その日寝る前にうろ覚えの「ハトのポーズ」

を実践してから眠ったら、翌日目覚めたとき

ものすごい背中の痛みに襲われた。

それが13日だった。

「いきなり無理をするもんじゃないよ」

と家族に笑われてしまうのだった。

13日からセンター試験の開催に伴って

大学では「センター休み」に入った。

そんな中でもドンドン雪は積もってゆく。

 

14日がやってきた。起きてまず、

背中の痛みがマシになったこと、

目がものもらいになっていなかったこと、

そして健康全般に感謝した。

センター休み明けが締め切りの課題や

やるべきこともあったんだけど、

そりゃなかなか手に付かないものだ。

 

江口寿史展の会場になっていた

万代へはバスで向かった。

屋根の上にどっさり雪を乗せ、つららを下げ

あまりの寒さに後ろのドアがあきづらいバス。

こんな日は車通りも少なく、

雪は残り、道路は依然として

アスファルトが見えない白色。

そんな中でも仕事を淡々とする

バスの運転手がかっこいいので

私はシン・ゴジラのサントラを聴きながら

バスに乗っていたのだった。

 

イベントが開催される13時より余裕を持って

入場して、まずは展覧会を楽しんだ。

イラストレーターとしての江口さんの作品は

雑誌の表紙や広告イラストがたくさん。

「高一コース」なんかの雑誌の表紙イラストの

描かれた年代を見てみると、これはきっと

両親がちょうど手にとってた頃かも。

MOREの特集のイラストに大学のパンフレット

農協のポスター、デニーズのメニュー。

実にさまざまな印刷物や広告を

江口さんの作品は飾っていたのだ。

展覧会を見て「うわぁ懐かしい」と思える

時代に生まれていたかったと悔やむこと少し。

 

漫画の原画もたくさん展示されていた。

壁にずらりと順番に並んでいたので

読んだことがなかった作品も楽しめた。

私の好きな「ひばりくん」もいた。

ひばりくんが夏休みにタワレコの袋を持って

歩いているとナンパされるシーンがあって、

それが巻頭ページカラー!みたいな感じで

描かれて好きだった。

ひばりくんがアロハシャツを着て

麦わら帽子をかぶり、ズボンに手を突っ込んで

歩いてるのが夏らしくていいのだ。

そこも展示されていたので嬉しかった!

 

会場を二周はしたけれど、開催中に

もう一回来ようと心にきめたのだった。

 

受付の時間になって、抽選で選ばれた15名も

さらに抽選して順番を決めることになった。

遠方から来た人は帰りの時間もあるから

優先するということで私は普通にクジを引く。

あんなにひどい雪の中だったのに、

全員と思われる人が

ズラリと並んでクジを引いた。

みんな江口さんに会うのを楽しみに

して来たんだな、としみじみする。

私はちょうど真ん中くらいの番号だった。

 

子どもから大人、男性女性、

東京から来た人に故郷が新潟の人、

さまざまな人が描かれてゆくのを見ていた。

その人の特徴によって、耳だったり

髪だったりと描き始めの場所は異なる。

会場となっていた「アニメ・マンガ情報館」の

方の司会と、江口さんと、

前に展覧会が開かれた京都の会場の方も

駆けつけてきて皆さんのマイク越しの

おしゃべりを聴きながらだったのもあり

(ラジオを聴いてるみたいだった)

順番が来るまで楽しく似顔絵を見ていた。

 

意外と早く私の順番がやってきた。

「よろしくお願いします」と言って、

江口さんの向かっている机越しの

椅子に腰かけた。

 

大人の方の似顔絵は見ていたぶんだけでも

皆どちらか斜めを向き、伏し目がちに

描かれていたので私もきっとそうだろうなと

思っていたのだけれど、(口も閉じてる)

「正面で書こう。目はこっちね」と言われて

予想していなかった向きになった。

や〜これは緊張するぞ!汗をかく。

 

女性は輪郭が柔らかい、ということで

私の丸い輪郭から描いてもらっていたようだ。

他の人は斜めを向いていたため

目線の先に観に来た人にもペン先が見えるよう

カメラで手元が写された画面が

用意されてたのを見ることが出来ただろう。

でも私は江口さんを見ていたため、

たまーに手元をチラ見をする程度だった。

 

江口さんはまるで占い師のように

人の顔を見ただけでその人の性格や

仕事なんかを想像してしまう。

私はどんな風に見えるのかが

密かに楽しみだった。

だから、「学生さんかな?」と聞かれて

「はい、まさに!」と嬉しくなった。

その後、新潟の日本酒の話で盛り上がった。

 

その時に笑った顔が良かったようで、

「よし!笑顔でいこう。

口元描くからしばらくそのままでね」

ということになり、私はニヤニヤしていた。

「口元は似せようと思ってシワとかを

たくさん描くと、逆に似なくなるんですよ」

という話を聞いていた。

線を少なくすることで逆にその人の

チャームポイントとして、

似せることができるのだという。

 

その後、パーマをかけた髪の毛や

服装(ズボンまで描いてくださった!)も

丁寧に描いてもらい、とうとう完成。

緊張していたけれど、江口さんの絵に

出会ったきっかけや、思っていることも

伝えることが出来て本当に良かった。

 

手渡されたスケッチブックの1ページには

確かに私がいて、微笑んでいた。

凛とした、というよりもどちらかというと

ふわっと丸い感じのする雰囲気も

江口さんは的確に表現してくださったのだ。

お礼と感想を言って、握手した。

「夢が叶いました!」と伝えることも出来た。

 

完成した絵を見てしばらく

ちゃんと呼吸が出来ず、

思わずスタバに駆け込んで

空気の代わりにカプチーノを吸って帰宅した。

 

正面、前を見つめて、笑顔。

これは実は私の苦手な向きだった。

写真を撮るときも避けてしまうポーズだった。

特に口元なんて、今まで不用意に笑うと

なんだか歪んでしまって嫌なパーツだった。

でも、江口さんがそのポーズに

向き合ってくれて、素敵に絵にして

くださったおかげでこんな自分の顔も

何だか前より好きになった気がした。

 

なるべくこれからも、笑っていようと思った。

 

物販コーナーに、今日まで

ツイッターのアイコンにしていた絵の

ポストカードを発見したので購入した。

そしてアイコンは私の似顔絵に変更した。

 

イベントが始まるまでは、周りにいる人にも

緊張して話しかけられなかったけれど、

終わったあと「よかったですね」と

何人かに話しかけられて、

江口さんの作品についての話が弾んだ。

他に似顔絵を描いてもらっていた人々も、

ずっと夢だったことが叶ったようで

本当に嬉しそうだった。

外の天気を忘れそうな幸せな気分だった。

 

家族に似顔絵を見せながら、

今日のお土産話をして楽しんだ。

父はひばりくんも好きだし、

江口さんのマンガ本も持っているので

(最近それを知った。もっと早く

話してればよかったな〜〜)

似顔絵を写真に撮って喜んでいた。

その晩の団欒で飲んだ日本酒が

とっても美味しかったことは言うまでもない。

 

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宝物がひとつ、増えた。

この気持ちを忘れないように、

こうしてブログに書きとめておこう。

江口寿史さんに似顔絵を描いてもらいました【前編】

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当時、愛読していた中学生雑誌には毎月

モデルおすすめのCDや本が紹介されてる

興味深いページがあった。

1人、どこか周りより大人びたモデルがいて

彼女が紹介していた本に目がとまった。

(今考えるとそのモデルは銀杏BOYZ

特別好きだったから、それ経由で

紹介していたんだろうなと思っている)

 

グミ・チョコレート・パイン

 

タイトルも聞いたことがないし、

著者の大槻ケンヂさんの名前は

ギリギリ聞いたことがあるけど、

何より14歳になりたての私の目をひいたのは

表紙に描かれた女の子の絵だった。

それはもう、8年も前の話だけれど…。

 

早速書店で『グミチョコ』を購入して

中学の「朝読書」の時間に読んだ。

そこで私は今まで少女漫画で観て

親しんできたウキウキな高校生活と

まったく違う高校生活を垣間見てしまった。

主人公は少女漫画で見た王子様のような

キラキラな男子高校生ではなくて、

とても冴えなーい大橋賢三君だった。

 

でも、舞台は30年近く前の高校だ。

こんなに冴えなーいわけないよ…なんて

期待しながら彼の高校生活を覗くことにした。

結果、面白くて「グミ編」読了後

「チョコ編」「パイン編」も読んだ。

ただ、ただのかわいい女の子の表紙だった

「グミ編」と違って、あとの2冊の表紙は

なかなか刺激的な絵だったため、

中学校の「朝読書」には向かないと思って

しっかりカバーをかけて読んだ。

漫画をこっそり読んだり眠ったりしてないか

見守りにくる先生が通ったときは

カバーをしっかり握りしめた。

いやあ、当時のことを書くと笑っちゃうな。

 

学校では誰にも見せないように隠していたけど

相変わらず女の子の表情とか線が良くて

「表紙カバーイラスト・江口寿史

という文字を見つけて、

「このすてきな絵を描く人はこういう名前か」

ふむふむ、と頷いているのだった。

 

結局『グミチョコ』はその後も私にとって

何度も読み直すシリーズになった。

高3で受験生の時、

「大橋賢三君、いいやつだな」

と思うようにもなった。

賢三が憧れている山口美甘子も大好きだ。

 

時は流れ、2016年の暮れ。

大学の研究室で管理しているツイッター

久しぶりに見ていたら、誰かのリツイート

江口寿史展 新潟で開催のお知らせ」

が回ってきたのを発見した。

 

夏休みに「kindleunlimited」で

『ストップ!!ひばりくん!』を読んでいた。

それを読んでやっぱり、

江口寿史さんの描く女の子(?!)は

素敵だなと、すっかりはまってしまう。

もっと絵を見たくてネットを見てみると

広瀬アリス・すず姉妹やPerfume

あまちゃん」の2人など、

実在する有名人の似顔絵も見つかった。

「江口さんに似顔絵を描いてもらえるなんて

めっちゃ幸せじゃん…いいな…」と思った。

そして私もいつか描いてもらいたいな、とも。

だから2017年の夢リストにも書く気でいた。

 

新潟で開催される展覧会にぜひ

時間作って見に行こうと思って

詳細を見ようと会場のページに飛ぶと、

似顔絵イベントが開催されることを知った。

 

1月14日というのはセンター試験

大学は連休になる。

どこかへ行こうかななんて思って

数日滞在できる余裕をあけていたから

ちょうど日程もばっちり。

抽選15名か…ま、送ってみるだけね…

と、手順に従って応募を確実にした。

 

私は抽選にはあまり縁がない。

大学に入って抽選で取れる科目は

今のセメスターでひとつ取れたもの以外

全て通らなかったから、運が悪いと思う。

最後に抽選が当たったと思う記憶は

小学校4年か5年生の時に雑誌で見て応募した

パリスキッズかサン宝石

ブレスレットだったと思う。

 

だから、あんまり期待しないようにした。

ただ、江口さんに似顔絵を描いてもらうことは

いつかきっと叶えたい夢だったから、

描いてもらえることになったら

どんな服を着て行こうかな…

寝癖は直さないとだめだよね…なんて

楽しい考えごとはけっこうしていた。

そして、夢リストにも

「かなわなかったら後で消せばいいんだ」

なんて思って、気軽に書いておいた。

江口寿史さんに似顔絵を描いてもらう」と。

 

年が明けて、抽選結果発表の日が近づく。

帰省した友人とプリクラを撮って

プリ機からiPhoneに気に入った一枚を

送信して、画像を見ていたら通知が来た。

「【抽選結果のお知らせ】」の文字を見て

すっかり緊張してしまうのだった。

当選という文字を見て、思わず隣にいた友人を

バンバン叩いてしまったと思う。

 

そして、

「14日まで、絶対体調崩さない!」と誓った。

 

でも、日にちが近づいてきて

1週間先の天気予報が見られるようになると

どうやらものすごい悪天候がやって来る。

楽しみにしていることの前に

突然体調を崩す傾向がある私は身構えた。

 

(続く)

BREATH OF THE GODS

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2017年の初映画は、「シネ・ウインド」で。

 

昨年は数えたら、

新潟市民映画館「シネ・ウインド」で

4本の映画を観ていた。

山口小夜子さんのドキュメンタリーに

フランス語の授業ですすめられた

『最高の花婿』に、

ファストファッションの仕組みがわかる

『ザ・トゥルー・コスト』、

そして先月観た『黒い暴動♡』。

先月、「シネ・ウインド」で予告編を

観た時点で「2017年も沢山観るだろう」

ということを直感した。

 

だから今年は会員になって

「シネ・ウインド」の映画を楽しむことに。

 

会員証を作ってもらって、そのまま

観た映画は『聖なる呼吸』。

副題に『ヨガのルーツに出会う旅』、

原題は『breath of the gods』。

 

妻がヨガにハマって、ヨガに興味を持った

ドイツ人の監督 ヤン・シュミット=ガレ。

ヨガの起源を知るために南インドを旅する。

 

今でこそ「ヨガ」というと

誰もが「ああヨガね、知っているよ」と言う。

でも、20世紀初頭のインドでヨガの存在は

それほど知られているものではなかった。

年配者や僧侶がするものでマイナーだった。

曲芸のようだ、という偏見もあった。

 

映画では“近代ヨガの父”と呼ばれる

故・クリシュナマチャリアという人を中心に

クリシュナマチャリアの弟子や子供たちを

取材して、ヨガの起源にせまっていた。

 

ヨガのポーズひとつひとつは

アーサナと呼ばれている。

アーサナをひとつ完璧に覚えたら

次のアーサナを教わることができる…

そうやって弟子たちは学んできたという。

私は幼い頃のピアノのレッスンを思い出した。

 

ヨガは身体の一部分でなく、

呼吸から始まって身体の細部に至るまで

余すことなく使ってするものだ。

身体全体を生き生きとさせることに

私はまた、クラシックバレエを思い出した。

 

ヨガの歴史を紐解いてみると、

クリシュナマチャリアは1888年から

1989年まで生きていたし、その弟子たちも

長生きしていることが分かった。

 

ヨガに「痩せるためにするものだ」

というイメージをもつ人も多いだろう。

確かに映画に出てくる案内役の

ヨガ講師もスラリとしていたし、

クリシュナマチャリアは小食だった。

でもヨガは、身体を浄化し心を整え、

集中力を高めるはたらきがある。

それが結果的に痩せることにも繋がるけれど

もっと深みのある存在であることを知った。

確かに腕で支えて頭で立つアーサナ

集中力がなくては出来るものでない。

 

一部の人にしか知られていなかったヨガ。

クリシュナマチャリアが、

マイソール王国の君主に雇われて

ヨガは身体能力を高めることだと教えたり

インドの大学で哲学と並んで

ヨガの科目を実践したことでその存在が

広まっていったという。

 

宗教の種類は関係なくただ、

魂の在りどころを探るというヨガ。

そして自分の思想を人に押しつけることの

なかったクリシュナマチャリア。

彼の心がけや弟子への受け継ぎ方が功を奏し

今こうしてヨガが多くの人に

親しまれているのだということがわかった。

 

私はヨガといったらハトのポーズを

するのがやっとだし、

以前興味を持って図書館で本を借りて

読んだ時に「なんか複雑…」という

感想を抱いたけれど、こうして映像で

観てみることによってよく分かった。

知れば知るほど奥深いヨガだけれど、

これをいつもの生活に取り入れることが 

出来たらもっと生き生き暮らせそうだ。

 

そして映画を彩るBGMがよかった。

ドビュッシーラフマニノフ

リムスキーコルサコフ…ソラブジも。

最初はもっとインドっぽい曲にしないの?

と不思議な気持ちで聴いていたけれど、

映画が進むにつれてしっくりきた。

 

ヨガをやっている人にはもちろん、

1年のはじめに観る映画としても

いい作品だと思った。

 

 

さて、「シネ・ウインド」の会員になると

その場で無料鑑賞券が1枚もらえる。

私はさっそくそれを使用したけれど、

そのほかにも割引価格で映画を観ることができ

毎月シネ・ウインドで上映する作品や

市民の映画生活がわかるマガジン

「月刊ウインド」が送られてくる。

館内の資料や本の貸し出しもあるそうだ。

これで新しい映画の世界が広がってきそう。

今年の夢リストはこれでひとつクリアだ。