「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」

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特に語呂がいいわけではない。

(「狂わせる」じゃなくて

「狂わす」にすれば幾分良くなるだろう)

でも、この映画のタイトルと

チラシを見たときにすごく観たくなった。

タイトルだけで話の内容を想像できちゃうよ。

前髪を下ろしている水原希子さんも

とってもかわいいし。

 

そんなわけで、公開日は

だいぶ過ぎていたけれど

朝イチの上映を狙って、

この映画を観に出かけた。

奥田民生になりたいボーイと

出会う男すべて狂わせるガール」

 

コオロギみたいな名字の主人公、

興梠を演じるのは妻夫木聡さん。

奥田民生みたいな飄々とした

かっこいい男になりたい、雑誌編集者。

興梠は先輩の仕事の引き継ぎで

訪れたお店にいた担当のプレス、

水原希子さんが演じる天海あかりに

ひとめ惚れしてしまう。

あかりは、付き合っている彼氏と

うまくいっていなくて…というストーリー。

私が書くあらすじよりも、

映画のタイトルのほうがよっぽど

このストーリーのキーワードを

端的に表してくれていて笑っちゃう。

 

この映画に出てくる人たちは雑誌編集者、

アパレル関係、ライターたち。作家さんも。

そして雑誌もたくさん出てくる。

私は雑誌も本も大好きだから、

興梠の仕事場を見て終始ときめいていた。

このブログでも何回か紹介している

あの作家の名前も劇中に出てくるし。

この映画を監督した大根仁さんが

ある雑誌でやっている連載も

そっくり劇中に登場した。

(美女と飲みに行く、

写真と文章が載ったコラム!)

普段から雑誌を愛読している人にとって

わくわくするシーンがいっぱいだった。

 

そして何といっても水原希子さん演じる

あかりがかわいい!

長ーい脚とくるくる変わる表情を

大きなスクリーンで観て、

何度下半身と表情筋を鍛えようと

思ったことか。

そして劇中を彩る奥田民生さんの楽曲たち…

興梠の部屋にも彼のレコードやポスター、

雑誌なんかであふれていた。

 

興梠のロールモデルとしての奥田民生さん。

「この人のこんなところが素敵で真似したい。

あんなふうになりたい」

と思える人は私にも何人かいる。

そういうロールモデルがいるって

幸せだな、と思う。

実際に興梠もツラときは

奥田民生さんの音楽を聴いて、

彼の活躍ぶりを脳内で再生して、

「よし!」と立ち直るのだ。

 

そうそう、主演の2人の脇を固める

俳優陣も豪華だった。

新井浩文さんに江口のりこさん、

安藤サクラさん、天海祐希さん…

「この人が出てくる映画は間違いない」

と思えるくらい

存在感あるリリー・フランキーさん。

 

雑誌とファッションを取り巻く

キラキラとした世界が

画面に濃縮されているけれど

描かれているのは女性と男性の考え方の違い。

どれだけ小悪魔でワガママな子が

描かれているんだろうと想像していたけれど

「狂わせるガール」のあかりは、

まさに男の人から見た女の子だった。

男の人にはあんまり理解して

もらえなさそうな

感情の機微が伝わってくる。

興梠に対してはちょっと

情けないなと思ったり、

頑張れ頑張れ!と応援しながら

私はスクリーンに向かっていた。

 

物語のラストで、興梠は

奥田民生のような男になれたのだろうか。

はからずもミステリーっぽい

要素も詰め込まれた

奥田民生になりたいボーイと

出会う男すべて狂わせるガール」。

動くファッション雑誌として観るもよし、

雑誌編集者の裏側を知る

“劇”上インターンとするもよし、

男と女についての恋愛指南として

参考にするもよし、

奥田民生の楽曲を楽しい映像と

共に楽しむもよし。

味わい方がいろいろだから、

ぜひ周りの人にも観てほしいと思った。

 

そしてインスタグラムでは

あかりのアカウントがあるし、

主演の2人が表紙の雑誌「an・an」には

興梠の1日が覗ける。

映画の中で興梠が携わっていた

雑誌「malet」も実際に発売されている。

バーチャルな映画の世界を飛び出して、

映画を観ている私たちも少しだけ

彼らの日常を体感できるのも楽しい。

こういった題材の映画ならではの

ユニークな試みだと思う。

正直に語る100の講義

夏休み中というのに、

大学に毎日のように足を運んでいる。

卒業研究が佳境だからねっ。

おまけに私は講義まで受けている様子。

 

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森博嗣著『正直に語る100の講義』

 

わりと自然に書けたのは、だいたいが飾らない、盛らない、驕らない正直さのためでさないか、と自分でも感じている。(P.226 あとがきより)

 

「100の講義」シリーズ第5作にして完結作。

このシリーズは、

見開き1ページのエッセイが100

収録されているというもの。

森さんはまず100このタイトルを考えて

そこから一気にエッセイを書いていくという。

「正直でいる、無理をしない」という

ポリシーがあるから書き終えることが

出来たのだと結んでいる。

 

「クリームシリーズ」のエッセイから入って

森博嗣さんのミステリー小説も

シリーズもの・単発ものに関わらず

数年で何冊か読んできたけれど、

まだまだそれは全著作のほんの一部だ。

こんなに多作なのはやはり森さんの

正直さが根底にあるからなのだと思う。

 

他の人の小説を読んだあと、

エッセイを読んだあと、

気持ちを引き締めたいときに私は

森さんのエッセイを手に取る。

『正直に語る100の講義』はちょうど

文庫本が発売されたばかりだった。

 

シリーズものは、1冊目で作品側が

読み続ける人を選別するという。

人に選ばれて読まれていると

思っていた本だけど、

実は本に選ばれているという見方が新しい。

そして私は「100の講義シリーズ」を

完結編まで読んでしまったわけだ。

 

森さんいわくエッセイでは

「厳しいことを言っている」そうで、

確かに何気ない普段の自分の思考や

行動を振り返らながら読むと恥ずかしくなる。

「あー、もう少し賢くなりたい」と思う。

森さんのエッセイは、優しくて厳しい。

 

 

 

60/100 「しかない」が、

強調に用いられているようだ。(P.140)

では、強調の表現(とても、非常に、

すごい、死ぬほど、めちゃくちゃなど)が

どんどん登場してきたことによって

言葉のデフレが起こっていると指摘する。

ていねいなメールを作りたいとき

感謝の気持ちをどうにかして表したいとき

私が感じていた表現に関するモヤモヤは

「言葉のデフレ」と呼ぶと

しっくりくるのか、と驚く。

 

 

92/100 栞、栞紐と

いうものの存在が不思議。

ページを覚えれば

良いだけなのに。(P.209)

では、便利なものが出てくると

人は考えなくなるということを、本に

ついている栞を例に挙げて述べられていた。

栞を使わなくても、ページを覚えておけば

記憶力の老化に対抗できる。

「忘れてしまった時の罰ゲームは

ページを探す時間だ」と書いてあった。

 

 

何の気なしによく使ってしまう言葉の危うさ。

受けた言葉の裏の裏を読んで疲れること。

そういったことを「100の講義」では

ひとつひとつ気が付いて、立ち止まれる。

読み終えるとニュートラルな気持ちになれる。

 

 

 

ちなみに、森さんは谷崎潤一郎の作品の

ほとんどを読んだと本書にあった。

私はそれを今まで知らなかったし、

ちょうどカバンにこのエッセイと

谷崎潤一郎の短編集を入れて持ち歩いていた。

本を持ち歩いていると、作品に出てきた

地名を他のところで目にしたり

目で追っていた固有名詞を隣のテーブルで

誰かが会話に出してきたりする。

読書はそういう偶然もおもしろいのだ。

 

「独立記念日」

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初めて手に取る原田マハさんの本。

書店で初めてこの本を見かけた時、

江國香織さんの文庫装丁みたいだな」

なんて思ったような。

 

独立ってなんだろう。

私がぱっと思い浮かべるその意味は

金銭的に自立すること、だった。

そもそも独立と自立は

ごちゃまぜになって私の認識を曖昧にしてた。

 

この「独立記念日」という短編集も

もともとは「インディペンデンス・デイ」

というタイトルからの改題だったそう。

independenceの意味には

自立も独立もふくまれる。

 

物語を読み進めるにつれて

原田マハさんが改題して「独立」を選んだ

気持ちが少しずつわかって行く気がした。

 

短編集の中の一編一編の主人公の

考えのクセや悩みごとなんかが

少しずつ自分のもののように思う。

この短編集の主人公たちは

2時間映画の主人公たちがそうするように

ラストに向けて私を置いて行ったりはせず

優しく寄り添ってくれるような気がする。

 

ある一編で私は通学のバスの中で

涙をぬぐったし

ある一編で私はページの端を折った。

一編一編噛みしめたい感情の連続。

 

ガムのようにしっかり噛みしめたあとは

しっかり生きていこうかな、と

すきっと立ち上がって駆け出す自分が見える。

 

愛の夢とか

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うまく言葉にできない、とは

どういうことだろうか。

 

川上未映子さんの『愛の夢とか』を

ずっと読もう読もうと思っていた。

旅先の駅の本屋で、快速に乗る前に

寝過ごして降りる場所を間違えることの

ないように一冊の文庫を購入した。

それが『愛の夢とか』だった。

 

 

alicewithdinah.hatenablog.com

 

 

前に『すべて真夜中の恋人たち』

という長編小説を読んだ。長編小説つながりの

『ヘヴン』も読まなきゃな、って思った。

今、『すべて真夜中の恋人たち』を

読んだときのブログを読んできたけど

私、一年経っても目の付け所が変わらないな。

 

うまく言葉にできないということは、誰にも共有されないということでもあるのだから。つまりそのよさは今のところ、わたしだけのものということだ。(9ページ『アイスクリーム熱』より)

 

ちょうど一年ほど前、川上さんの長編小説を

読んだときも「言葉」についての記述に

目をとめたようだったのだ。

 

『アイスクリーム熱』『お花畑自身』

『いちご畑が永遠につづいてゆくのだから』

なんて、いちいち章のタイトルが可愛らしい

短編小説だった。

 

文庫のタイトルになった『愛の夢とか』は

まさに、リストの〈愛の夢〉を

おばあさんが演奏している話。

好きだと思った。

 

川上さんの描く物語は、人間が普段

何気なくやってるけどわざわざ人に見せたり

発信したり共有したりしないところとか

人に言わない考えが丁寧に綴られてると思う。

そしてそんな文章を読んでいて想像するのは

センスのいい色づかいをする画家が

細い線で描いた、挿絵のようなものだ。

 

愛の夢とか』に出てくる主人公たち

みんなを抱きしめたくなってしまった。

特に最後の短編(と言えども一番長い)

『十三月怪談』が一番よかったな。

人の現実は、その人が考えている通りに

いかようにもなっていくのかなと感じた。

 

さて、何を考えようかな。

「うまく言葉にできないということ」

について。

私、ずっと、考えごとは夜にするのがいいと

思っていたけど、どうやら

アウトプットするのは朝がいいらしい。

だから朝にこのブログを書いてます。

 

赤と青を混ぜて

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旅に出るときの鞄に差し込んだ本は

ただでさえいつもよりも印象深く見える。

でも、旅先で読んだ山内マリコさんの

『パリ行ったことないの』は

さらにいつもよりも濃い印象を残してくれた。

 

彼女の著書『ここは退屈迎えに来て』で

"ファスト風土"という言葉を知った。

ありそうな地方都市でのアレコレ、

鬱屈した人々の精神が描かれていて、私は

車で買い物に出かけた時によく見る景色を

見ては本の内容をそっと思い出したりした。

 

少し前に『アズミ・ハルコは行方不明』

という映画を映画館で観た。

これも、原作が山内マリコさんで

センスのいい本しか置いていないと評判の

書店で見かけて以来気になってた作品だった。

主人公・アズミハルコを蒼井優さんが、

地方都市で派手に暮らす可愛い女の子を

高畑充希さんが演じていた。

『ここは退屈迎えに来て』で描かれていた

地方都市のあの側面をまた、

映像で見るとこうなるのかと実感した。

思ったよりもファンタジック。

 

そして、ついに手にとったのは

『パリ行ったことないの』というわけだ。

 

タイトル通りパリに行ったことがない

女性たちが主人公の短編集。

でも、パリに行ってみたいと

熱望する者ばかりでない。

「パリでも行こっかな」なんて人もいる。

 

今までに触れた山内作品で描かれる

地方都市の鬱屈とした部分はそのままに、

「女性は歳を重ねてこそ美しい」

「どう生きたいかは自分の軸で決める」

といった、女性たちの憧れの的になる

"フランス人の生き方"といったものが

対照的に描かれているという構図。

 

彼女のたちの「パリに行こう」という

望みは叶うのか、その結末はぜひ

小説のページをめくって確かめてほしい。

 

私自身もパリには行ったことがなくて

「第三」外国語の授業として

フランス語を履修してしまうくらいには

パリに憧れがあるし、

パリジェンヌみたいなマインドで生きたい。

だから『パリ行ったことないの』を読んで

主人公の女性たちと一緒に考えた。

「あこがれ」にとどまらないパリの印象も

本の中には描かれていてそこが清々しい。

 

赤と青を混ぜたらまあ、紫色になる。

日本の小さな都市で暮らす気持ちを赤として

パリでの凜とした暮らしを青とすると

『パリ行ったことないの』では

赤青の二色を混ぜたら真ん中には白が出来て

国旗みたいになるかなあ、なんて

ちょっと変なことを考えたりもした。

 

 

「おせいさん」のエッセイ

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おいおい、またまた久しぶりじゃん。

今、スターバックスにもらった

ドリンクチケットの期限がせまってるのに

気付いて、ベンティサイズのラテと引き換えて

それでイスに座ってこれを書いてる。

さむいので、フラペチーノな気分じゃない。

 

昨年田辺聖子さんの小説に出会って

(夏休みだった。『孤独な夜のココア』)

すっかり田辺さんの書く文章が好きになり

『おちくぼ姫』という、古典を訳して

田辺さんらしい文章になったものも読んだ。

 

そして、今年やりたいことの1つにあった

田辺聖子さんのエッセイを読む」

を叶えるべく、私は全3冊の

エッセイシリーズを本棚にそろえた。

 

『女は太もも』『やりにくい女房』

そして今読んでいる、『主婦の休暇』。

 

「おせいさん」こと田辺聖子さんと

仲良し「カモカのおっちゃん」が

様々なことをあーでもない、こーでもないと

小気味よく議論するエッセイだ。

様々なこと、なんてぼかして書いたけど

とくに1冊目『女は太もも』は

男と女についてが多い。

 

「おせいさん」の紡ぐ言葉は、

小説ももちろんそうだけれどエッセイになると

どうしてこんなに優しいのかな。

「人間ってどうしてこんなにだめなんだろね」

なんてことが書いてあっても、

その根底には人間に対する愛があふれてる。

 

2冊目『やりにくい女房』では、

エッセイが書かれた時代(1970年〜80年代)に

起こった出来事をなぞりながら

(チジョウのもつれで起きた事件とか)

「おせいさん」と「おっちゃん」が

これからの時代を憂いたりする。

でもそれも、「これから日本は

どうしようもなくなってくね」じゃないのだ。

女の人がもっと活躍したらいいとか、

そういうことは

昔から言われていたみたいだけど、

その先まで想像しているのがおもしろい。

 

「おせいさん」のエッセイを読んでいると

気持ちがスーッと楽になる不思議。

最近色々なところに出掛けているので

ふとさみしい気持ちになったり

必要以上に緊張したりするんだけれど

「おせいさん」のエッセイがカバンにあると

これまたスーッと心がほぐれてゆく。

 

今読んでいる3冊目『主婦の休暇』でも

すこし前に起こった事件とか、

おいしいお酒のことが書いてある。

最近も田辺聖子さん、

新しくエッセイを書いたのが

文庫になったみたいなので

このシリーズを読んじゃっても寂しくない。

 

そしてまた、小説も読みたくなるのだ。

累計4万アクセス!

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ここ1ヶ月、更新をお休みしている間に

アクセスカウンタが40000アクセスを超えたと

私に教えてくれました。

 

2014年の秋に始めたこのブログ。

当時は19歳だったけど、

あっという間に22歳!!

あの頃とは同じ大学生ではあるけれど

考え方も髪型も、

ライフワークとしていることも

どんどん変わってきています。

 

そんな中でもやっぱり文字を綴ること

本を読むこと、ゆっくり休むこと、

何か面白いことを探すことが好きなのは

変わっていないようです。

その気持ちがモチベーションになって

ブログを書かずにはいられなくなったり。

 

ありがたいことに、ときどき週末に

出演させていただいているラジオ番組でも

公式のfacebookをブログのようにして

好きなことを書ける機会をもらっています。

番組でお話ししたことに関連して

より詳しく説明したり、

番組でお話しそびれたことを追加したり

楽しく書かせていただいています。

 

それでも話しきれなかったこと、

もっとささいなこと、これからもこの

ブログに綴っていけたらと思います。

 

おととい、ふと1年前kindleで読んだ本を

読み返したくなって読みました。

kindleだったので本を出してくる手間もなく、

端末から簡単に過去の私に寄り添ってくれた

ものにアクセスできて便利でした。

気に入った文章に線を引く機能を

使っていたので、どのページに線を引いたかな

と見直してみるのも楽しかったです。

1年前にはじっくり読まなかった部分にも

おとといは線を引きながら読みました。

過去に選択したものが、また今の私の

背中を押してくれているようでよかったです。

 

学生生活もあと少し(の予定)だけれど、

このブログにも学生の頃考えていたことを

ぎゅっと入れることが出来たらいいな。

 

いつも、ブログ「謎の国のありす」

を読んでくださってありがとうございます。

これからものんびり更新していきます。

 ぜひたまに遊びにきてください。