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「生きるってすばらしい」よりも「生きるほうがおもしろいのかも」

 


20代の宿題:続けることと始めること

 

つらい思いをしながら継続していくというのは、

同時に感性の死を意味します。 

 

受験生の頃からお世話になっている

ツルハシブックスの西田さんブログより。

感性の死。なんだかドキっとした。

 

そんな時に読んでいたのは三浦しをん著「天国旅行」。

「『きみはポラリス』に続く人生が愛おしくなる7つの物語」

と帯には記されていた。このタイミングで手に取ってよかった。

 

今回は生と死の狭間、心中がテーマだった。

またあとがき(筆者は角田光代さん)に頼ってしまうので申し訳ない。

 

どの小説に登場する人物も、死を救済と考えている。死んでしまえば、今背負う荷から解放される。もしかしたら、そんな荷のない、まっさらな生があらたに与えられるかもしれない。そんなふうには書かれていないが、そのあらたな生では今より絶対うまくできるはずだという期待を、多くの人が持っている。 

 さらに角田さんは述べる。

現実には、なんの仕返しも抗議もできない無力な私たちは、死によって、神のごとく他者を罰し、傷つけ、深い後悔を負わせることができると、どこかで思っている。 

 

小説では救済、抗議、復讐、前世から来世へのリセットボタン、

亡き人に会う手段、愛情の確認、または万能感などが描かれる。

みずから死を選ぶ登場人物たちは

死の向こう側は現在の現実よりよいところだと信じている。

 

生きることをやめることで救われる。

こういうことは生きたまま現実でも行われうることだと考えた。

 

例えば通っている学校をやめたいと思うとする。

いじめられたから。先生が嫌いだから。給食がおいしくないから。

いろいろな理由があるにしても、やめた先の生活は

今よりいいと思うからやめたくなる。

そしていじめたやつらに思い知らせたいことがある、とか。

「天国旅行」風に言うと、それが組織からの死を選ぶということだと思う。

それでもずるずると生活を続けてしまうことで感性は死んでいくのか。

 

いつも私は自分の中で考えをまとめてからブログを綴るか、

 答えが分かっても実践につなげることが出来ていない場合は

私にとっての今後の課題ということで記事をまとめている。

だけど今回は答えを出すことさえも今後の課題にしたい。

 

感性の死を避けることだけを選び、やめてしまうとする。

そうするとその人自身は救済されるけれど、組織は変わらず続いていくだろう。

その人が組織に対して持つ印象もきっとずっと変わらない。

これも結局は感性の死につながってしまうのではないかと考える。

だけど無理をして忍耐し続けることも放ってはおけない。

この折り合いのつけかた、バランスがとても難しく感じる。

 


苦しさの強要は全員を不幸にする - 土屋裕行.com

 

土屋さんによると、苦しさの強要は全員を不幸にする

苦しいこと、それが当たり前になっているという状況が

変わらず続くことは不幸なんだなぁ。

土屋さんは解決策として、

自分に対しても、他人に対しても、少し優しくなって苦しみの連鎖を断ち切ることで、少しは生きやすくなるのでは

 とまとめています。記事に出てくる方は話し合いで解決したそう。

相手が何を考えているかわからないことも、苦しみの原因だったのかも。

 

まだ私の中で答えの出ない問題ではあるけれど

何にしろ苦しみを心に抱えたままでいるのは避けたいことなのだと思った。

 

話は戻るけれど、角田さんは

生きていなければ何も得られないと述べている。

苦しみも引き受けるけれど、強さや美しさなどよいものも引き受けられる。

小説では「生きるってすばらしい」と賛美することなく

「生きるほうがおもしろいのかも」と読者に思わせる、とも述べている。

おもしろい、と思えるならばまだ感性だって死んではいないのかも。

 


生き方を考えるほど死を考える - 土屋裕行.com

 

 今回二度目、土屋さんから考え方のエッセンスを拝借する。

死を考える時間は、今生きていく時間の為に必要なことだと述べている。

最近私もこれを実感した。

 

ブログではよく本を紹介する。

年内に沢山読まなければ、と思っているからでもあるが

単純に様々な人生や考え方、言葉、世界に触れられるからおもしろい。

私にとって読書は生が輝く瞬間のひとつになっている。

 

たとえば「天国旅行」で印象的だったのは

 

きみが放課後に、学校に隣接する運動場で球技に興じていたことがあった。(中略)きみときみの友人は輪になって歓声を上げていた。晴れた空に行き交う白いボールを、ボールを笑顔で追うきみを、私は気づかれぬように見つめた。(「遺言」より) 

 

 

初恋

初恋

 

放課後の校庭を走る君がいた

遠くで僕はいつでも君を探してた

浅い夢だから 胸を離れない(村下孝蔵「初恋」1983年)

 

他の短編より時代設定が昔であるのもあいまって

私の好きな曲の一節が頭に浮かんできた。

張りつめたお話の空気の中、ちょっとほっとするひととき。

お話の中の男女はそんな場合じゃないのに

私だけ文章のきれいさや曲を思い出して和んでしまっているのは

ちょっと申し訳ないけれど、それも読書の楽しみ。

 

感性を磨くことをやめろと言われるのは、

生きることをやめろと言われるより私にとってつらいことかもしれない。

 

 

天国旅行 (新潮文庫)

天国旅行 (新潮文庫)