Girl Goddess #9
昨年とおととしにお気に入りだったノースリーブのワンピースをタンスから出さないままで、今年の夏が風とともに通りすぎようとしてる。
中二のとき、収録されている短編「マンハッタンのドラゴン」がとくに心に残った。ふたりの母親と暮らす子どもが、ほんとうの父親を探しにいくもの。
シャワーのあとに顔がほかほかすることもなくなってきた。
昨年は9月の半ばでもノースリーブだったから、私の身体は今年のこの涼しくなる速度についていけてないと思ってた。でも身体のほうは意外と理解していて、頭のほうがついていけていない。
先週は2度も水族館に訪れた。まだ暑かった。横浜の中華街のビルのなかに潜む「ヨコハマおもしろ水族館」そして新潟の「マリンピア日本海」。
「ヨコハマおもしろ水族館」のターゲットはおそらく子どもで、タコの水槽にたこ焼き機のオブジェが入っていたり、遊び心満載のPOPが貼られていてスタッフも仕事を楽しんでいることが伝わってきた。
「マリンピア日本海」は近年リニューアルしたばかり。最後の記憶は小学生の頃祖母に連れてってもらったこと。川魚のコーナーなんかもあり、上流・中流・下流にはどのような魚がいるのかが新潟の水辺風景の壁紙の前の水槽で詳しく説明してあった。リニューアル前から人気だった「マリントンネル」は健在で、可愛らしいエイもたくさんいた。年間パスポートの購入を考える。
もらいもののすいかが自宅にあるけれど、もうナシが食べたい。
今年の夏の終わりは気まぐれな感じがするけれど、こうやって明瞭に季節が移り変わっていく日本が好きだ。いくつになっても、忙しくなっても季節の行事はなるべく楽しみたいと思っている。
さて、秋が来たら「◯◯の秋」モードになる。読書、食欲、スポーツが定番であると思うけれど、私にとっては秋は手先が涼しくなってこまかい作業にぴったりな季節だと思う。
冬のために編み物をするのもよし、絵を描いてみるのもよし…だから「芸術の秋」というものもあるのかも。
「ZINE」というものをご存知だろうか。
上記の記事にあるように、「ZINE」は「マガジン」から名前がくる小冊子のこと。今でこそネットでZINEにかかわるサービスが充実し、雑誌にも取り上げられその存在が日本でも知られるようになってきたが、もともとは90-00年代に西海岸地方で盛んだった。
フランチェスカ・リア・ブロック著「"少女神"第9号」
- 作者: フランチェスカ・リアブロック,Francesca Lia Block,金原瑞人
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/02/09
- メディア: 文庫
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なんだか中二病っぽいタイトルの本だけれど、それこそ私がこの本に出会ったのは中学二年生の頃だった。地域の図書館に置いてあったのを見つけた当時は、ZINEというしゃれた文化やその物語を包む空気に圧倒されたものだった。文庫本化されていることを知り、書店で夏休み前に再会した。
レイヴはほとんど泣かなかった。あの日ビーチでぼくの話をきいたときくらいだ、泣いたのは。もっといろんなことをいって泣かせてやればよかった。人魚になったレイヴの涙の海で一度でいいから泳いでみたかった。その海でロックスターなんかみんな溺れてしまえばいい。
イジーはあたしには集中力があるからだというけど、ほんとうはイジーとアナスターシャが、あたしならやりたいと思ったことはどんなことでもうまくできると思いこませてくれるからだ。
「"少女神"第9号」というのは、物語にも出てくるさきほど紹介したZINEのタイトルでもある。ママに内緒で着飾ったZINEの編集者の女の子ふたりが、スターに会いに行く話。
10代という時をすぎて(物語の世界では「ティーン」)読み返してみると、全体を通して主人公の女の子たちの肉体精神ともに不安定で儚いところがなんだか愛おしくなる。
訳者あとがきは物語をこう結ぶ。
全てがファンタスティックで、キラキラとしていて、セクシーなおとぎ話のようだ。透明なキャンディ越しにロサンゼルスを見たら、こんな感じなのかもしれない。本をとじたあとは、なんだか少しすてきな女の子になれたような気持ちになれる。気まぐれな夏の終わり、ぜひ手にとってみてほしい一冊である。