すてきな勘違い

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「ステキな金縛り」、でなくてね。

12歳の冬、まだ1月の中旬ごろ
雪やら何かがふる合間に
青空が広がった日があった。
私は携帯電話を買ってもらったばかりで
嬉しくて空の写真を撮っていた。
曇の日も雲の陰影が美しいところを
視界で切り取って写真に収めた。
世間では「ハート形の雲」の画像が
出回っていた時代だった。

青空が広がるのは珍しい。
空気もいつもの湿度を含んだものじゃない。
「春の気配がもう、する」と思った。
おばに、「春はまだまだこないよ。
そのうち大人になったらわかるようになる」
と言われたことをよく覚えている。
本当にそのあとまた冬らしさが戻って
私は友人と放課後にあたたかい部屋で
ポテトチップスばかり食べていた。

それから8年が経って、きょうの新潟は
あの日みたいな天気だった。
年が変わってから毎日のように持ち歩き
強風で何本か骨が怪しくなってきた
ビニール傘のかわりに、今日は
かばんの中に収まる折りたたみ傘で出かけた。

もう、2月なのだ。もうすぐ立春だ。

思春期の子どもが自分のからだの成長の
スピードの速さに戸惑いだすように
(心は置いてきぼりな感じが心細い)、
季節ももう知らない間に
春に向かっているのか、と気づかされる。
先月どこかで季節外れの梅が咲いていた。
このところの気候はおかしかったけれど
やっぱり進むべくして四季はまわっている。

だけど私はまだ、
これが春の気配なのか分からないでいる。
1月のあの日みたいに偶然にただ
青空が見えただけかもしれないから。
あれはすてきな勘違いだった。
「そのうち大人になったらわかるようになる」
その時はいつくるんだろ。