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贈り物のネタバレ

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ペットは飼い主に似てくるというし、
恋人同士もだんだん似てくるという。

実はかなりの読書好きだったということが
最近わかった友人の好きな作家は
江國香織さんだ、という。
ページに散らばるリアルな情景描写(どこかサエている)や主人公らをとりまく匂いの変化に惹かれていた。

前に江國香織さんの本について書いた記事で
彼女の本が好きな理由を述べていた。

江國香織さんの本の登場人物は
繊細さと大胆さを持ち合わせて、
観察眼がするどい感じがする。
それでいて、いい意味で鈍さもある。
つまり、魅力的なのだ。
彼女の本が好きだと言っていた友人も
また、その登場人物たちに似ていると思う。

3月に入って1冊目、本を読み終えた。

江國香織 著 『つめたいよるに』

スーツケースに10冊もの本を入れて
旅をした時はさすがに後悔したけれど
本をかばんに詰めないでどこへゆく。
ロサンゼルス行きの飛行機では絶対に
江國香織さんの本が読みたい気分だった。

『つめたいよるに』は短編集。
10ページにも満たないような短い物語が
たくさん収録されていた。

「氷すいはつまらんのう」おじいちゃんが言った。 「色もなくて、味もそっけない」 でも、そのそっけない氷すいが、私は昔から好きなのだ。さくさくとすくうと、さくさくと透明な冬の兵隊が行進するような、つめたい音がする。(「スイート・ラバーズ」より)
「今日はいいことにしましょう」 暮れていく空を見ながら、横顔でお姉ちゃんが許可をした。「間食なんてとるにたらないことだわ」(「子供たちの晩餐」より)
私たちは台所に駆け戻り、それからまた庭に戻って、ぱっくりと口をあけた土のバケツに、一人一人パンを投げ捨てた。鮮やかな緑色の冷えたサラダを捨て、チキンソテーを捨て、つけあわせのにんじんとほうれん草も捨てた。その上からレモンジュースをどぼどぼ撒くと、バケツはお腹一杯の、幸福な胃袋みたいに見えた。(「子供たちの晩餐」より)
人間の恋は大変、もっとシステマティックにできないのかしら。季節をつくってけじめをつけるとか。(「藤島さんの来る日」より)

作品に描かれるのは少年から老人、動物、はたまた幽霊まで実にさまざまだ。

みんな何かを想って、その想う何かは永遠ではないことを悟ってかなしくなったりしている。私が読んできた江國香織さんの本はいつもそういうことを書いている気がする。

この短編集では大切なものが増えるほど、そのひとつひとつを手放すのはこわくなる。さまざまなことに出会い、生きてゆくことの尊さとか難しさが書かれている。

自分が何者かを忘れてしまえる究極の電波レスプレイス(今はお金を払えばWi-Fiを繋げられる時代になっちゃったけど)・上空で読むのにぴったりな作品だった。

「ねぎを刻む」という章を読んでいて主人公がどんな人かを想像した。というか想像しはじめる前に、身近な人がねぎを刻んでいるところがリアルに浮かんできた。

あまりにもぴったりだし、きっと共感するだろうし、どうしても本人に読ませたくなった。彼女の誕生日に贈りものするならこの本だ、と思ったけれど、その日が来るまで半年はある。だからさっさと見せてしまった。…また別のプレゼントを考えなくちゃな。

全然知らない人のことを書いているのにまるで、隣のあの人を書いているよう。ときどき自分のことを言っているのかと思うくらいでドキッとすることもある。

だから読書はたのしい。

つめたいよるに (新潮文庫)

つめたいよるに (新潮文庫)


デューク

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