チーム戦はおあそびか

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秋田と青森をむすぶ「特急つがる」から時折、山の木々にまぎれて桜が見えた。咲き残った、という表現が似合う桜だった。まばらな他のつがるの乗客はきっと寝ていた。おそらく誰にも見られることのない桜だったから、ふてくされて咲いているように見えた。
ハスビーン、ふてくされた桜とのんべえ - 謎の国のありす

昨年のGWに書いた記事を引用した。

まさに、こんな桜を今年も見た。
新潟県山形県の県境あたりの山で。

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もろともに あはれと思へ 山桜
花よりほかに 知る人もなし

という百人一首がとっさに思い浮かぶようになったのは、やはり「ちはやふる」の影響か。

5月の初日に映画「ちはやふる 下の句」を観に行ってきた。

(上の句の感想はこちら)

舞台はいよいよ全国大会へ―。新に東京都大会優勝を報告する千早に、思わぬ新の告白「かるたはもうやらん…」。ショックを受ける千早だが、全国大会へ向けて仲間たちと懸命に練習に励む。そんな中、千早は、同級生ながら最強のクイーンと呼ばれる若宮詩暢の存在を知る。全国大会の個人戦で詩暢と対決する可能性がある。
新に「強くなったな」って言われたい、詩暢に勝てばもう一度新とかるたを取れるかもしれない…クイーンに勝ちたい!新に会いたい!千早の気持ちは次第に詩暢にとらわれ、“競技かるた部”の仲間たちから離れていってしまう。
そして、そんな千早の目を覚まさせようとする太一。千早、太一、新の気持ちが少しずつすれ違っていく…。(公式HPあらすじより)

上の句よりも確実に、シリアスな空気のただよう2時間。

上の句で千早は私が冒頭にとりあげた「もろともに…」の一句を「あなたがいれば、私は頑張れる」という意味でとっていた。

そんな明るく前向きな千早の心の向きを変えてしまうほどの「クイーン」若宮詩暢の存在感はやはり凄かった。

桐島、部活やめるってよ」や「あまちゃん」で存在感ある役をこなしてきた松岡茉優さん演じる若宮詩暢。登場したときからただ者ではない雰囲気を漂わせる。

「(かるたの)チーム戦なんて、かるたやなくても何かをみんなでやりたい人たちのやるもんや」「チーム戦なんてお遊びやったって、全員に思わせたるわ」……幼いころからたった1人でかるたに向き合い力をつけてきた詩暢の言葉。

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新や詩暢にとらわれ競技かるた部の仲間たちとすれ違う千早に、太一もまた自分を見失う。「部長の俺がしっかりしないと…」

そこに、「もっと私たちを頼ってください!」とほかの部員たちからの言葉が。

「個人戦こそ、本当のチーム戦」

この流れ、どっかで見たことある…
と私は映画を観ながら思っていた。俺を私に変えたら、高校生の私の言葉そっくりそのままだったのだ。



高校の放送部で私は部長をしていた。
3年前の今ごろは新入部員が多く入ってきてくれたことを喜び、同時にたくさんの部員たちをしっかりまとめなくては…最後の大会ではベストを尽くさなくては…と責任を感じていた。

何かあったら部長の責任、結果が出せなかったらバランスを取れなかった自分の責任、と思ってガチガチな殻にこもりかけたとき、「もっと頼ってくれていいんだよ」とほかの部員に声をかけてもらった。

大会で私が出ていた部門は個人で出るものだった。個人戦、だから同じ学校の仲間も見方によってはみんなライバルではある。

でも、1人じゃない。会場のロビーの机を囲んで自分の出番のギリギリまで部員同士でアドバイスしあったり、当日配られる課題のアクセントを手分けして調べたりと協力しあった。先輩や顧問の先生はそれこそ「個人だけどチームなの。おもしろいでしょ」と、私が1年生のときにそういってくれたっけ。


そういう高校生活を送ったからこそ、「ちはやふる 下の句」は懐かしい気持ちになったし、色々な登場人物に感情移入が出来た。同時に、こういう映画を高校時代に観れていたらどんな気持ちになっただろうとちょっとくやしくなった。

ちはやふる」の物語は続編に続く。
続きもまた、スクリーンで観たい。


p.s.
個人的に、Perfumeの「FLASH」を聴きながら観たエンドロールで「競技かるた部撮影協力校 青森県 五所川原高校」の文字を見つけ、太宰治の執筆部屋のある五所川原を訪れた日がちょうど1年前だったことを思い出し、すごく興奮した。あの「ふてくされた山桜」を見て、五所川原に向かったのだ。