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『何者』ヒット予測

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ビリギャルは間に合わなかったけど、

こっちはすっごくタイムリー。

 

 

映画『何者』公開まであと1週間となった。私は映画化が決まってから気になってすぐ、文庫本の帯にもそう書いてある原作を手にした。(キャストの写真が載っている大帯タイプになるまで購入を待てばよかった…と後悔している)

 

就活を控え、大学生が6人、誰かの部屋を「就活対策本部」にして就活に臨む物語だ。

 

本を開くとまず、物語の前に主な登場人物のTwitterアカウントとプロフィールが書いてある。無難に自分のことをまとめて書く人、バンド活動に夢中な人、スラッシュで区切って自分に関する単語や関わった活動を並べて書く人。アカウントのアイコンも、その人の人柄をわかりやすく表していた。

 

映画に出演するキャストの顔を思い浮かべながら原作を読んだので、劇中での人間関係の移り変わりやキャスト同士が会話をする様子がものすごくリアルに頭の中に浮かんできたのが面白かった。

 

 

想像。想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。他の人間とは違う自分を、誰かに想像してほしくてたまらないのだ。

 

例えば、「夢」とか「センス」とか「最近読んだ本」とか、あるテーマを与えられて、一万字でそれを表現しなさいと言われれば、全く違う文章が生まれるだろう。だけどそれが一四〇字に制限されたとき、ギンジと隆良はきっと、同じキーワードを使って相手の想像力を掻き立てようとしてくるはずだ。

 

「だって、短く簡潔に自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ」「だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表してるんだと思う」

 

そうです。エントリーシート。自己分析。面接で語れるのは自分を表すにはとても少ない言葉たち。私にとってはまだ体験してないことだらけだけれど、先輩から聞く話に似ていた。

 

「就活をしない」と同じ重さの「就活をする」決断を想像できないのはなぜだろう。決して、個人として何者かになることを諦めたわけではない。スーツの中身までみんな同じなわけではないのだ。

 

四月になると、キャンパス内にスーツ姿の学生がぐっと増える。スーツを着るということが特別なことではなくなってきたからか、ネクタイや髪型などへのこだわりもなくなり、よりシンプルになっていく。マフラーや手袋やコートも身に付けなくなった真っ黒な姿は、余計な脂肪を削ぎ落し体重測定に挑むボクサーに似ている。あとはもう戦うしかないのだ。

 

物語は冷静に周りの人を分析する拓人(佐藤健演じる)の目線で語られる。思わず「わかる」「あるある」と頷きたくなるような観察ぶりだった。(朝井リョウさんの過去に映画化された『桐島、部活やめるってよ』を観たときにも同じことを思った)

 

映画の宣伝では「就活ホラー」とも呼ばれていたとおり、読後感は「こわい」だった。それでも、読もうか迷っている友人にはぜひ読んでほしいとすすめた。

 

 

「生きていくことってきっと、自分の線路を一緒に見てくれる人数が変わっていくことだと思うの」

 

「ビリギャル」では金髪の受験生を演じた有村架純が「何者」では真面目な就活生を演じている。「ビリギャル」を観て受験生の頃観たかったと思ったのだが、まだ「何者」がある。

 

「受験は団体戦」だと、高校の時に叩き込まれた。でもその「団体」の中でもみんなで協力して合格を目指そうとか、そういう単純な話じゃなかった。みんな同じ学校とか、同じ合格の仕方を目指していたわけではなかったし。結局センター試験が終わったら学校にも行かなかったし、団体戦が守れなくても仕方なかった。

就活も、団体戦なんだろうか。『何者』の中では少なくとも登場人物たちが団体戦で臨んでいた。誰かの家に集まって、エントリーシートを書く。自分が知らない部分は誰かに分析してもらう。そういうことをしていったらいいのだろうか。

 

想像力っていったいなんなんだ。 

 

夏のあいだ、映画を観に行くとその度に『何者』の予告編が流れた。米津玄師の歌に中田ヤスタカがエフェクトをかけた主題歌。映画の雰囲気を盛り上げる、登場人物たちの趣味。魅力と期待がたくさんつまった時間だった。

 

YouTubeでも予告編をやっていて、なんとなくコメント欄も見たら荒れていなかった。「観に行った映画の本編に集中できないくらい気になった」「鳥肌が立った」「声を加工した米津さんも新鮮でいい」「中田ヤスタカすげえ!!」映画館には頻繁に行かない、という人も『何者』をきっとスクリーンで観たい映画として選ぶのではないかなと思う。

 

 そして『君の名は。』はまだまだヒット中だという。東京の映画館では1日10回も上映するところがあるとか。『君の名は。』の制作に関わった人はインタビューで「ポテンシャルももちろんあったけれど、宝くじが当たったみたいにヒットして驚いている」と話していたのが印象的だった。

 

最近のことしか私は知らないけれど、ヒットする映画はぐんぐん伸びるし、いっぽうたくさんの劇場で上映していてもそのかげに埋もれてしまう映画もたくさんあるのだなと感じた。二極化、ではないけれど、それだけSNSや仲間うちでの口コミも力を持っていると思うし、いわゆる「宝くじ」のような映画も存在するんだな。

 

『何者』もきっと、たくさんの人が楽しみにしている。私もそのうちの一人としてもう少し上映を待ちたい。

 

 

何者 (新潮文庫)

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