『溺れるナイフ』

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ずっとサシでランチしたいね、と言ってた友人と映画を観に行った。肝心なランチはフードコートですませて、これから始まるドキドキの2時間をひたすら楽しみにふたりで待った。

 

溺れるナイフ

 

 「溺れるナイフ」特別映像 - YouTube

 

「溺れるナイフ」特別映像2 - YouTube

 

都会から田舎に越してきた中学生の人気モデル・夏芽と、引っ越し先の街の神主の跡取り息子・コウの出会いのシーン、ふたりは水中にいた。

 

タイトルが画面に映し出され、小松菜奈さん演じる夏芽がぼそぼそと喋る。転調が繰り返されて不思議な気持ちになる音楽が後ろで流れてる。

 

菅田将暉さん演じるコウが夏芽の心を乱すとき、流れている曲も転調が繰り返されている。ピアノで演奏されるアルペジオが行き先もなくうようよとうごめいて、足の速いコウを夏芽が追うさまが浮かんでくる。

 

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水中のシーン…

夏芽と同じくらいの年齢のとき、大好きだったアーバンギャルドのMVを思い出してしまう。

 

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そしてこのコントラスト。

金髪、黒髪、制服。

 

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2007年に大ヒットした映画

『恋空』を思い出さずにはいられない。

 

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壁ドン、顎クイ、ですっかり浸透した人気の「ドSキャラ」ではないけれど、優しくなったり冷たくなったりする金髪の男の子に翻弄されている黒髪ロングヘアの女の子。

 

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今年は『ちはやふる』『君の名は。』で大活躍した上白石萌音さん演じる「高校デビューした」カナ。

 

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これもまたどうしても『恋空』の優を思い出してしまう、夏芽に優しい、重岡大毅さん演じる大友。

 

溺れるナイフ』の物語に、ふたりの存在も欠かせなかった。

 

 

「10代の危うかった時代の全能感」というものを、この作品は表現していた。

 

田舎に越してきたけれど、カメラマンに目をつけられて映画に出ることになりそうだ。でも、コウちゃんがいる田舎は楽しい。

 

「私がどうするかは、コウちゃんが決めてよ」

 

「好きな人」を超えて「神」のコウちゃんにきかないと、この先の人生が決められない15歳。

 

「お前は面倒くさいから、もう関わんな」

 

この言葉が高校生の口から発せられることに、どれくらいの本音が隠されているのか。感情に身を任せて放っただけの言葉だとしても、言われたほうはすべてが面倒になるくらい落ち込む。

 

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キラキラした中学生だったのに、ある出来事がきっかけで高校生になったらすっかり野暮ったくなってしまった夏芽だった。

 

 

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原作は読んだことがなかったのに、キャストとあらすじが発表されたとき「小松菜奈も、菅田将暉もぴったりだ、やっぱりね」と思った。

 

ふたりとも役作りをしなくても、きっと原作の雰囲気に合ってると思ったのだ。とても映画が楽しみだった。

 

太眉ブームがくる前から、小松菜奈さんを中学生雑誌などでみてきた。眉と、透明感が印象的なモデルさんだと思っていた。それが近年映画で活躍するようになって、『溺れるナイフ』では私が印象的だと思っていた部分がしっかり「中学生」と「高校生」で演じ分けられていて、すごいんだなあと感じた。

 

そして、コウがクラスの中で自由人として一目置かれてはいるものの、けして「モテ男」として描かれてはいなかった。モテモテの男の子が雰囲気が正反対の女の子に恋をする…よくある少女漫画の、夢のあるあの感じと違う。

 

世の中のことをなんにも知らなかった(今もそんなに知らないかもしれないけど)、衝動でなんでもできそうな気がしてた10代の季節はもう終わってしまった。だからひたすら懐かしい気持ちで私はスクリーンを見つめていた。隣で観ていた友人もそうだった。

 

「私、夏芽たちと同じくらいの年齢のときに観てたらもっと遠い世界に感じちゃってたかも」と友人がいう。私がもし15歳の時に観ていたら…うーん、なんだか、すごく影響を受けてしまいそうだった。

 

「もし自分が夏芽だったら、コウちゃんのこと好きになってた?」なんて質問をしあうのも楽しい。ひとりでじっくり浸るもよし、女友達と観た後にワイワイ盛り上がるのもよしだ。

 

映画館には私たちより下の世代と思われるような女の子たちが沢山いた。彼女たちは『溺れるナイフ』を観て、何を思ったろう。早足で私たちを追い抜いた二人組は、「いやー最後全然意味わかんなかったわ」と言ってた。

 

今、10代を終えてからこうして落ち着いて観に来ることが出来て私はよかった。そうじゃなきゃなんだか危険だった。

 

そして、監督を手がけた若い女性の山戸結希さん、山戸さんの表現したかった世界観を全力で再現した俳優陣が同じ時代に活躍していてよかった。山戸さんは雑誌のインタビューで、「映画を観て、こんなんじゃだめだ、私ならもっと『溺れるナイフ』をうまく撮れる、と思ってくれる人が沢山現れたら私は嬉しい」と話していた。

 

 15歳の頃といえば、ちょうどAKB48がとっても売れ出していて、ねもうすと書いて「神(ネ申)」という言葉がDVDのタイトルにつけられていた。「神対応」とか、「神キター」みたいな言葉もよく聞いた。

 

先生や親の言うことに反発したくなったり、大人ではないけれど子どもでもなくなってきたかもしれない…とひとり悩んだりする季節には、「私の神さん」が必要だったのかもしれない。

 

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2013年、ドコモのCMに出演した小松菜奈さんを見て、当時から『溺れるナイフ』の原作のファンだった人びとの中で「実写版の夏芽がいる!」と話題になっていたらしい。CMを観てから映画を観ると、遊び心が感じられる瞬間が必ずあると思う。危険な映画だ、なんて言ってしまったけれど、美しくもクスッと笑えるところもあるよ。

 

私の住む新潟では県内で2箇所しか上映していないレアな映画だが(もっと色んなところでやればいいのに!)、ぜひスクリーンで楽しんでほしい作品だった。

 

 

関連・参考記事

(ネタバレ含む、鋭い考察)

溺れるナイフ - 神様を得た15歳 - - こみねもすなるだいありー

 

アーバンギャルドPV)

 [MV] アーバンギャルド「ワンピース心中」 - YouTube

 

小松菜奈NAVERまとめ)

小松菜奈で『溺れるナイフ』映画化!3年前のCMがリアルにソレだった - NAVER まとめ