青春映画からは卒業したつもりだった。

人前で泣くのが得意ではない。

それなのに最近涙腺がなんだか弱い。

家族でテレビを観ているときにうっかり涙腺が壊れるといけない。

もう一人、この人の前で泣けないという人がいたことを今日まで忘れていた。

 

年末から高校時代の友人たちが次々と帰省してきて、

そして彼らはおとといくらいからバタバタと帰って行った。

その中帰省期間がなんだかいつも周りとずれている友人と今日は会ってきた。

 

数日前…

「会う日さ、なんか映画観ない?」

「(ベイマックスは観る予定あるしなあ)アオハライドとかどう?」

「いいね~観たいと思ってたんだ!観よ!!」

テンポよく決まった。彼女とはいつもそうだ。

 

その友人とは中学生の頃からしばしば映画を観に行っていた。

中2の頃、泣けると評判の映画を観に行った時、

一緒に観に行った他の2人は涙を流していたし

映画館全体がそういう雰囲気に包まれていたのに

私と友人はうまく集中できなくて涙を流すどころか大爆笑だった。

それからなんだか彼女の前で泣けない。

 

高校生が主役の、きらきらとした青春映画は定期的に公開される。

私自身が中学生の時でさえその雰囲気に圧倒されて

「これはうまくできたまやかしだ!」なんて思っていた。

だから映画館で観るのは早めに卒業したはずなのに、

アオハライドはなんだか面白そうだったので観に行きたくなったのだ。

 

冒頭で本田翼さん演じる双葉がにこにこ笑いながら走っているとき

「うわぁ…どうしようやっぱり眩しすぎる!若い!!」

なんて思ったけれどそんな心配はその後撤回されることになる。

 

気が付くと物語の中に入り込んでいた。

主人公に感情移入するでもなく、高校生の自分に戻るでもなく

なんだか物語を紡ぐ登場人物たちを見守るなにかになっていた。

何回か友人とシェアして食べていた

キャラメルポップコーンがしょっぱくなったりした。

 

エンドロールが流れて、会場が明るくなる。

映画の中でくさいセリフが発されるたびに友人がクスリと笑うので

(涙を流したのがばれてたらこれは恥ずかしいぞ~)と思っていたけれど

「面白かった」と彼女は言う。「これは涙出かけたわ」

 

友人の帰省の終わりの時間が近づいていたため

そのあとはゆっくり出来ないながらも映画の感想を言い合った。

お互い同じシーンでグッときたこと、登場人物の性格のこと…

ひとりで映画を観に行くのも気楽で好きだけれど

こうして感情が新鮮な時に感想を言い合える人がいるということで

誰かと映画を観に行くのは楽しいなと思う。

ただ、友人とはお互い意地を張っているのか涙は見せ合えなかった。

 

わりと苦楽を共にした友人と一緒に高校生時代を振り返る。

彼女と「またね」と別れてからひとりで振り返りの振り返りをする。

そういえば友人に意地を張って涙を見せられなかったように、

感情を素直に表現できなくなった時期が私にはあった。

人間味のなさ…それで損をしていることは自覚していた。

だから進学を機に地元から離れて行ってしまう人たちに

「さみしい」と伝えることから始めて、素直になる練習をした。

だからこそ今、帰省してくる人たちを迎えることが楽しい。

 

だけど最近、どこまで感情を表現するのが自分らしいのかが謎だ。

大人ぶって全く表現しないのも私らしくなくなったけれど

あっけらかんとしすぎるのも私らしくない。

今日友人の前でちょっと意地を張ってみて

「これかな、これがちょうどいいのかもな」とちょっぴり腑に落ちた。

 

「青春は、間違える。」とアオハライドは謳う。

「うん、まちがえていいやつだよね、青春って。」と友人も言う。

アオハライドを観て青春のかたちはもっと自由でいいのかもと思った。

青春時代に獲得した感情の数々はやがて宝物になる。

そういうことならば素直になるための

ぴったりのものさしを模索している今も、まだ青春と呼んでいいのかな。

 

 

 

 

 

追記

1.本田翼さんはやっぱり可愛かった!

「かわいい」「美人」と以前から評判の本田さん。

まんがの中の女の子みたいにくるくると変わる表情に惹かれる。

あやうく帰りに本田さんが表紙になっている雑誌を買うところだった。

 

2.「アオハライド」ロケ地にときめいた。

高校時代の青春はたぶん部活に捧げてしまったと言える私は、

高3の頃部活の大会で訪れた長崎が映画に出てきて無言でときめいていた。

長い階段を上り続ける主人公たちを見て坂の多い地域であったこと、

長崎の川に架かる橋はその形から「眼鏡橋」と呼ばれていたこと

などを思い出した。ついでに、バスガイドさんの顔も思い出した。

 

九州にいつかまた行きたいなと思う。

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こんなものも見つけてしまったし。