シンデレラのひみつ

かぼちゃの馬車、美しいドレス、そしてガラスの靴…このキーワードから思い浮かべられる物語は?と尋ねれば、きっと誰もが「シンデレラ」と答えるだろう。

もう半月も前の話になってしまったが、映画「シンデレラ」を観てきた。

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昨今のプリンセスものの相次ぐ実写化は、プリンセスブームを物語っていると私は考えている。数年前は何だか気恥ずかしくて、私はプリンセスものが好きであることを人に言えなかった。今ではプリンセスグッズや企業とのコラボ商品で賑わっており、私の周りにも「推しプリンセス」がいる人がいる。

継母と姉たちに虐げられて生活していた少女が舞踏会の夜に魔法をかけられた。魔法が解けてしまってもガラスの靴を頼りに王子が探しに来てふたりは結婚する…と、「シンデレラ」はひとことでまとめられてしまうシンプルなストーリー(前回観たネタバレ厳禁の「イニシエーション・ラブ」と比べるとなんてすっきりしているんだろう!)。

物語と、それを彩る様々なアイテムまでもを簡単に思い出せてしまう…「原点にして頂点」というキャッチコピーが映画の宣伝に使われているように、数あるプリンセスものの中でもやっぱり「シンデレラ」は別格だなと思っている。

シンデレラの魅力を語るコラムがあった。

今回は、1冊の本を参考にしながらシンデレラの秘密を読み解きたい。


「シンデレラの教え」/佐藤富雄

王子様に出会い愛される シンデレラの教え

王子様に出会い愛される シンデレラの教え


美容のことを書いているある方のブログを読んでいるときに発見したこの「シンデレラの教え」。私はブックオフで300円になっていたものを購入した。当時中学生だった私に外見を磨くことだけが美容ではない、ということを教えてくれた。


シンデレラは普遍的な物語だった

ディズニーがアニメーション化して視覚的に物語を捉えられることが出来るようになった「シンデレラ」の物語。もとは中世の時代に口承で伝えられてきた民話がベースなんだとか。それをフランスの作家のシャルル・ペローが「小さなガラスの靴」、ドイツのグリム兄弟が「灰かぶり(シンデレラ)」というタイトルで出版したことから、ヨーロッパ全土に広まっていった。

しかしシンデレラ型の物語自体はヨーロッパだけでなく世界各地で民話として残されている。日本でも東北地方に「糠福と来福」というタイトルの、いわば「和製シンデレラ」が伝えられている。

普遍的、という意味は広まっている、ということにとどまらない。ストーリーのそのシンプルさから、「誰もがシンデレラになれる可能性がある」と感じてしまう。



シンデレラを語る上で欠かせないキーワードとそれが持つ意味

1.かぼちゃの馬車
=どんなに辛くても夢を見ることを忘れないシンデレラを、夢の舞台へ導いてくれた不思議なパワー
(レモンを思い浮かべるだけで酸っぱさを思い出して思わず唾液が出てしまう…という例を使って、著者の佐藤富雄さんは本書でこれを科学的に「脳のオートパイロット機能」と呼んでいる)

2.美しいドレス
=自分への自信
(継母の意地悪な「お前も舞踏会に行きたいかい?(行かせないよ)」という質問に、普通なら「私なんてめっそうもない」なんて謙遜してしまいがちなところをシンデレラは「行きたいわ。でも、ドレスがないの」と答えている。自分に自信がないからではなくて、ドレスがないからという理由で舞踏会に行かないことから、シンデレラの自信がうかがえる)

3.ガラスの靴
=世界にたった一人の個性
(魔法が解けて、かぼちゃの馬車もドレスも御付きの者たちも消えてしまった。でも、ガラスの靴だけは残っていた…ということでガラスの靴は不思議だ。佐藤富雄さんによると、それは魔法使いのおばあさんからシンデレラへのプレゼントであり揺るぎない個性である、と表現されている)


そして最後に私から補足したい。

映画の中で舞踏会から帰ってきたシンデレラは魔法が解けてしまっても、また継母たちにひどい扱いをされても、「あの舞踏会は最高にステキだった。」と幸せを噛みしめながら生活していた。その姿を見て思わずうるっときてしまったのだ。

「必要なのは、勇気と優しさ」と予告編でも語られていた。そこに幸せを噛みしめ、笑顔でいられる強さが加わってこそ「シンデレラ」なんだなと思った。あそこでシンデレラが卑屈になっていたら、私たちの知るハッピーエンドとはまた違ったエンディングを迎えていた物語だったかもしれない。

映画館に行く前に手に取ったある雑誌に、「シンデレラ」の映画を早めに観た人たちの対談のコーナーがあった。「シンデレラが、シンデレラになれた理由がよくわかる」なんて書いてあった。ただラッキーだった、というよりもなるべくしてシンデレラになった、というような。

半月前、五月病だったから…なんていうと都合のいい言い訳かもしれないけどそんな気分だった。「シンデレラ」を観て、物語をゆっくり咀嚼してみて、心が洗われた気分になった。

「シンデレラの教え」ではさらに、シンデレラからヒントを得て恋や仕事に生かせるような考え方が科学的な分野に基づいて分かりやすく紹介されている。


佐藤富雄さんの著書とともに、Amazonの関連本としてよく出てくるのは上原愛加さんの本だ。こちらには、今回私が補足した「幸せを噛みしめ、笑顔でいられる強さ」の要素を分かりやすく説明してある。高校で倫理を勉強しているときに、思想の分野と関連付けて読んでいた。なるほどと思うことばかりだった。



ちなみに私にも「推しプリンセス」はいる。「眠れる森の美女」のオーロラ姫だ。姫、王子ともにルックスは抜群な感じがするし、バレエの作品にもなっているからだ。だけど、こうしてシンデレラの魅力を読み解いてしまうとシンデレラに惹かれてしまうのだ。