ぎゅうどん屋の魅力

すこし重みのある扉を横に引く。中に入ると厨房をまるく囲んだカウンターを、さらにぽつぽつと後ろ姿が囲んでいる。めいめいに丼をかきこんで味噌汁をすすっている…

某牛丼屋さんにやって来ました。

夕食を外でとる必要のある日はコンビニかパン屋さんを利用していたけれど今日はなんだか気になって。

食券を買って、あいているカウンター席に腰掛け店員さんに渡します。牛丼並盛りにキムチ、たまごのセットをつけてみました。すると店員さんに「半熟と、生たまごどちらがいいですか」聞かれ、「半熟でお願いします」と言うと返事と一緒にお冷がカウンター席に置かれます。

ひと息つけばお盆に載せられすぐに来る今夜の夕食たち。いただきますと手を合わせようとすると、隣にいたサラリーマンが立ち上がり「ごちそうさまね」と厨房に声をかけ店をあとにしていました。

あたたかいお味噌汁をひとくちすすった後、牛丼に手を伸ばします。

牛丼としてごはんにぽてっとのっている牛肉は、美味しい味付けがされた姿がごはんの帽子のようで、幼い頃からなんだか好きです。

丼をかきこむ間も、キムチに箸を伸ばす間も「ごちそうさまでした」と言ってお客さんたちが店をあとにしていき、新しいお客さんが入ってきては食券を店員さんに手渡します。

お冷もおかわりして、完食するとお腹いっぱい。私も「ごちそうさまでした」と言って店をあとにしました。「はいよ」、という感じで店員さんがニコッとしてくれました。

時間帯もあるのかもしれませんが、お客さんはみな一人。それでもカウンターでまるくなって、くちぐちに「ごちそうさま」を残して帰っていくこの牛丼屋さんはなんだか温かみがあり、また訪れたくなりました。

ちなみに私はこの後ジャケットをお店に忘れてしまい、そのことにひんやりした風の中で気がつきました。牛丼屋さんに電話をかけるときにあわてていて「きょう、お店は何時までやっていますか」なんて聞いてしまうと「さっき来てくれた女性のお客さんですよね。牛丼屋は24時間やってるよ。だからいつ来ても大丈夫!ちなみに今日取りに来れば私もいるから大丈夫だよ」とやさしいお返事が返ってきました。

牛丼屋さんに来て、こんなにあたたかい気持ちになれるとは。

ジャケットを忘れてよかったかもしれない。道中はきっと寒いだろうけれど、これからまたあのすこし重みのある扉を横に引きに行くのが楽しみです。

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雲は遠くに、こうもりは近くに、ボートは水面に浮かぶ川辺の夕暮れ。

深まっていく秋はこうして、ときどきこんなあたたかさを思い出して過ごしていきたいものです。