「アデライン、100年目の恋」

これまで生きてきて、いくつの映画館で映画を観てきたんだろう。

大きなショッピングモールに入った映画館、街なかにある映画館、昔から市民に親しまれてきたような映画館、容器を持参すればポップコーンを入れてもらえるというカナダの映画館も一度だけ。近所の公園で夏祭りに大きなスクリーンでドラえもんを観たのは数に含めてもいいかしら。

数えてみるとやっぱりそう多くないのが「行ったことのある映画館」。映画を観に地元から出る…というのも今まで小説の中だけの話だった。

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先週、新宿駅から歩いて5分のところにある映画館「新宿ピカデリー」で映画を観てきた。(新潟ではこの映画をやっていなかった)

「アデライン、100年目の恋」

その週末、ジェニーはエリスと一緒に彼の実家を訪れる。彼女を見るなり驚愕の表情を浮かべた父親ウィリアム(ハリソン・フォード)は「アデライン!」と呼びかける。それは、彼女が過去ただ一度だけ本名を打ち明けてしまうほど強く惹かれた、かつての恋人との再会だった—

公式サイトのあらすじが長かったので、最後の段落だけ…

主人公のアデラインという女性は29歳のとき、ある事故がきっかけで老化することが出来なくなり、100年ちかく29歳の見た目の美しさのまま過ごしている。

不老不死はおとぎ話の中でも願われることだし、アンチエイジングといって若さを保ちたい女性も多くいる。そんな人びとにとってアデラインの境遇は羨ましくなるかもしれない。

けれどアデラインは周りの友だちが老いても、娘がおばあさんになっても見た目は29歳。政府には怪しまれ、10年ごとに移り住んで名前を変えて生きてきた。

恋だって、老いることのできない自分と居ることで愛してしまった人を悲しませないために結婚を囁かれる前にその人のそばから離れなくてはいけなかった。

ひとりの部屋で、愛犬を撫でながらアデライン(現在はジェニーという名前)はかつての恋人や歴代の愛犬たちの写真を眺め、何とも言えない切ない表情を浮かべていた。

SFものの恋愛小説なんかを読むと、同じ時を刻んで恋愛が出来るのは幸せなんだなと思う。まさしくこの「アデライン」もそう、そしてこの映画に老いることは幸せなことなのだということに気がつかされた。

20歳という歳は、見た目的にはまだ成長を続けられるのか、「お肌の曲がり角」にさしかかりはじめているのかが微妙だ。それでもいつかは老いてゆく。街で見かける「美しく歳を重ねていく」人に私もなれるのか、不安だった。

何十回目もの29歳を過ごしてきたアデラインはやはり、使う言葉の知的さも身のこなしもまわりの女性とは違っていた。そこが素敵だった。実際にそこで過ごしてきたからこそ彼女の語る近代史は深みがあった。マナーを語る口ぶりも親しみがあった。

時の流れを噛み締めながら生きていくということは、美しく老いていけるヒントになるのではないだろうか。


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パンフレットを買えばよかったなぁ~。

表紙から、アデラインが何度も29歳として時を過ごしたきたことがわかる。


この映画とは、雑誌のコラムで出会った。

ラグジュアリーな世界観が大好きでハマった海外ドラマシリーズ「gossip girl」で主人公のセリーナを演じたブレイク・ライヴリーがこのふしぎで魅力的な映画に出ると聞いて。

ggは全シリーズのDVDを集めてしまうほど好きだったし(英語の勉強もこれでできる)、ブレイクの笑顔が特に好き。つらいことがあっても彼女に笑いかけてもらえばそんなことなんて吹き飛んでしまうような、ひまわりみたいな笑顔を見せるのだ。

映画を観終わったあとの化粧室でも、「ゴシップガールでのセリーナみたいにはっちゃけた役も似合ってたけど、あんな難しい役もはまるブレイクってすごいね」とほかのお客さんが話していた。

いつもと違うスクリーンで観る映画ってよいものだ。