ムーンリバーを聴きたくて
午前十時の映画祭、
最寄りの映画館での開幕は
「ティファニーで朝食を」!
おめかししてすましている姿は
ピンクと黒の色合いでポスターになって
雑貨屋さんで見かけるほど有名だ。
何度も目にした絵だったけれど
映画を観たこともなければ
あらすじさえ知らなかったのだ。
「ティファニーに併設されてるカフェで
毎朝朝食を楽しむお金持ちの話?」なんて、
恥ずかしながら勝手に想像していた。
映画は「ムーンリバー」をBGMに始まる。
朝早く車から降りたオードリー・ヘップバーンは、ポスターの恰好のままショーウィンドウに近づく。ニューヨーク、宝石店「ティファニー」の前で紙袋からクロワッサンとスープを取り出し食べる。宝石を見ながら、サングラスをかけて。
「気持ちが紅く(!)滅入った時は
ティファニーに行くの」
に言わせれば、「気持ちが黒く沈む」のは中年すぎた雨の日の感情らしい。
電話はうるさいからトランクの中にしまいこんでいる。部屋は最低限必要な家具しかない。同居している猫は名無しで、「川辺で出会ったから一時的に一緒に暮らしている」。
何事にもとらわれない、誰のものにもならずに自由奔放に生きるホリー(オードリー・ヘップバーン)。
同じアパートに住む作家志望の青年ポールが、彼女の兄のフレッド(兵役中)に似ていることから親近感を覚え、ポールの方もホリーの自由奔放さに惹かれて2人は仲良しに。
そしていつしかポールはホリーに
「愛しているよ」と伝える…
「君は自分で作った檻の中にいて、どこへ行こうとも自分自身にしかたどりつけないんだ」
口紅がないと読めない手紙、万引きするのに最適なのは仮面、バカなのは平凡よりもずっといい…
素敵なモチーフや言葉がちりばめられた映画だったが、私が楽しみにしていたシーンがあった。
劇中何度もアレンジを変えて流れる「ムーンリバー」をホリー自らが弾き語りするシーン。
ポールがアパートの窓際から顔を出し、ホリーの姿を見つけて微笑むところがよい。
やすらぎのメロディに短調が加わって、魅力的な音楽だった。
今年度も「午前十時の映画祭」を
楽しみたい。