赤と青を混ぜて

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旅に出るときの鞄に差し込んだ本は

ただでさえいつもよりも印象深く見える。

でも、旅先で読んだ山内マリコさんの

『パリ行ったことないの』は

さらにいつもよりも濃い印象を残してくれた。

 

彼女の著書『ここは退屈迎えに来て』で

"ファスト風土"という言葉を知った。

ありそうな地方都市でのアレコレ、

鬱屈した人々の精神が描かれていて、私は

車で買い物に出かけた時によく見る景色を

見ては本の内容をそっと思い出したりした。

 

少し前に『アズミ・ハルコは行方不明』

という映画を映画館で観た。

これも、原作が山内マリコさんで

センスのいい本しか置いていないと評判の

書店で見かけて以来気になってた作品だった。

主人公・アズミハルコを蒼井優さんが、

地方都市で派手に暮らす可愛い女の子を

高畑充希さんが演じていた。

『ここは退屈迎えに来て』で描かれていた

地方都市のあの側面をまた、

映像で見るとこうなるのかと実感した。

思ったよりもファンタジック。

 

そして、ついに手にとったのは

『パリ行ったことないの』というわけだ。

 

タイトル通りパリに行ったことがない

女性たちが主人公の短編集。

でも、パリに行ってみたいと

熱望する者ばかりでない。

「パリでも行こっかな」なんて人もいる。

 

今までに触れた山内作品で描かれる

地方都市の鬱屈とした部分はそのままに、

「女性は歳を重ねてこそ美しい」

「どう生きたいかは自分の軸で決める」

といった、女性たちの憧れの的になる

"フランス人の生き方"といったものが

対照的に描かれているという構図。

 

彼女のたちの「パリに行こう」という

望みは叶うのか、その結末はぜひ

小説のページをめくって確かめてほしい。

 

私自身もパリには行ったことがなくて

「第三」外国語の授業として

フランス語を履修してしまうくらいには

パリに憧れがあるし、

パリジェンヌみたいなマインドで生きたい。

だから『パリ行ったことないの』を読んで

主人公の女性たちと一緒に考えた。

「あこがれ」にとどまらないパリの印象も

本の中には描かれていてそこが清々しい。

 

赤と青を混ぜたらまあ、紫色になる。

日本の小さな都市で暮らす気持ちを赤として

パリでの凜とした暮らしを青とすると

『パリ行ったことないの』では

赤青の二色を混ぜたら真ん中には白が出来て

国旗みたいになるかなあ、なんて

ちょっと変なことを考えたりもした。