「まつ」と「滝子」の力、そして植物図鑑
森田屋の「まつ」、青柳商店の「滝子」はかつて、お互い顔を合わせれば優雅な口調で罵りあう犬猿の仲だった。
朝ドラの『とと姉ちゃん』を観ている。
犬猿の仲だった2人には共通点があった。
家族といざこざを起こしても、翌朝になると落ち着いて考えをまとめ、家族の考えを尊重しようとするところだった。
「まつ」と「滝子」はそれぞれ、老舗のお弁当屋と木材店をやっていた。戦争が長引き、時代が暗い影を落とすようになると商売の存続に頭を悩ませるようになる。家族みなが、自分たちの店のことを思って意見を持ち、いざこざになっていた。
それでも「おかみさん」だった2人は家族を率いる役目があった。ほかの者の意見を尊重し、ひと晩眠ったら引きずらない…というさっぱりとしたところがかっこいいと思った。
主人公の「とと姉ちゃん」姉妹はけんかになると何日も引きずっていたので、その対象が描かれていることもおもしろかった。
「まつ」や「滝子」のさっぱりさがかっこいいなら、やっぱり「とと姉ちゃん」や「さやか(『植物図鑑』の主人公)」の魅力は表情がクルクル変わるところだ。
高畑さんは、幸せになれる役もそうじゃない役も、表情の豊かさでなんでもこなしているところがすごい。
物語の主人公は視聴者や読者に、ほかの登場人物には見せない顔を見せてくれる。本当はつらいのになんでもない顔をしていても、物語の受け手にはそのつらい気持ちをちゃんと知らせてくれる。(三人称で書かれている物語はミステリアスだけど)
高畑さんが表情で私たちに気持ちを教えてくれるから、安心して物語についていかれるんだなとドラマや映画を観ていて思った。