ドッグイヤーに倣って

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部屋の窓をあけてベランダへと身を乗り出すと、頬を撫でる程度の風が吹いていて心地よい。晴れていて、雲もほとんど動かない。

 

いやー、またまた1年ぶりの更新だ。

 

晴天を横目に、薄ぐらい部屋にいて、近況報告をしようと記事の作成ボタンを押したところだ。

 

この1年のあいだに新しさを感じたことといえば…髪を染めたり、引越しをしたり、書いた短編小説が作品集のいっぺんとして出版されたり、籍をつくったり歳を重ねたりした。(25歳になりました)またずいぶんと色々なことが起きたものだ。仕事は相変わらずしゅくしゅくと続けている。

 

とくに社会人になってからの時の流れは早いもので、「あの日々は夢だったのかな…」と思うくらいほんの2年くらい前のことを遠く感じている。

 

それでも本棚には本が並び、きちんと読んだ証がところどころのページの折り印(ドッグイヤーというらしいよ)にある。そうそう、今暮らしているアパートにもお気に入りの本や読み返したい本は運び込んで棚に整然と並べています。そんな空間がさりげなく、時を刻んできたことを思い出すきっかけになったりしているから不思議だ。

 

ことしのはじめに、有給休暇をとって北海道釧路市に行ってきた。大学生のころ夢中になって読んだ桜木紫乃作品の舞台をこの目や肌で感じたいと思って。

 

主人公たちが言葉を交わした幣舞橋、やりきれない思いを歌い上げたキャバレー「銀の目」の跡地、春採湖のほとりにある六花亭…(記事冒頭の写真は夜更けの喫茶ふらんすにて)

 

何度読んでも強烈に印象に残って離れない『ラブレス』の舞台、標茶弟子屈あたりにも足を運んだ。長ーい建物があって丸く加工された草の塊が置いてあれば牛舎で、寒空の下、牛たちが草を食んでいる光景も見ることができた。目に焼き付いた思い出はまた私に、仕事や創作へのヒントをくれる。

 

まだまだ行きたい場所、見たい景色がたくさんある。いま、このような時世ではかなわないことが山ほどある。

 

願望何もなくしては到底乗り越えられないわざわいの中。どんなふうに心を保って過ごしていこうか、日々考えをめぐらせるべきことは多い。

 

1年に1度、またここで少しずつ書き残していけたら私らしい習慣がひとつ増えると思っている。来年の今ごろ、なにかすごく楽しい文章を記せるように、世の中が良い方向へと向かいますように。