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残り全部バケーション

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「問題」児がいるのであれば、「答え」児もいるのではないか、岡田君が問題を出し、別の誰かが答えるのではないか、と発想したほどだ。

 

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新しい東京の記憶を - 謎の国のありす

 

先月、東京で6年半来の友達Hちゃんに初めて会った日のこと。おすすめの映画や本について話してたとき、何気なく開いたネットのページに美味しそうなおやつがあらわれた。

 

伊坂幸太郎著『残り全部バケーション』

 

「これはジャケ買いしちゃう表紙だよね」「私これ絶対読む」Hちゃんの言葉を忘れていない。彼女に会えたことが嬉しくて、余韻に浸りたかったので後日新宿の紀伊國屋書店に行って私も『残り全部バケーション』を手に取った。(Hちゃんには言ってなかったけど!)

 

伊坂幸太郎さんは有名な作家だけれど、私は今まで読んだことがなかった。それこそHちゃんと会った日のブログ記事に出てきた国語の先生が好きな作家だった。初・伊坂なので本を開くのにちょっと緊張した。

 

「過去のことばっかり見てると、意味ないですよ。車だってずっとバックミラー見てたら、危ないじゃないですか。事故りますよ。進行方向をしっかり見て運転しないと。来た道なんて、時々確認するくらいがちょうどいいですよ」

 

「レバーをドライブに入れておけば勝手に前に進む」(物事は勝手に進むから、気負わなくていいよ)

 

なるほど、伊坂はいい言葉を「いい言葉」と思わせる文章を書く人だ、名言がザクッザクと掘り出せちゃうんだなと序盤から思った。まず、『残り全部バケーション』という潔さがいい。

 

当たり屋、強請りはお手のもの。あくどい仕事で生計を立てる岡田と溝口。ある日、岡田が先輩の溝口に足を洗いたいと打ち明けたところ、条件として“適当な携帯番号の相手と友達になること”を提示される。デタラメな番号で繋がった相手は離婚寸前の男。かくして岡田は解散間際の一家と共にドライブをすることに―。 (Google Booksより)

 

ざっくり言ってこういう話なのだが、こりゃページをめくる手が止まらなくなっちゃう本だ。

 

溝口と岡田を中心に、各章でさまざまな人が出てくる。とくに岡田に関しては幼少時代までさかのぼる。「問題児」だった。どうやら大人になっても危なっかしくて、さらりとしていて、関わった人からしたら気にせずにはいられないタイプの人のようだ。

 

ネタバレになっちゃうので結末は言えないけれど、「そうくるの!!」と唸ってしまいたくなる。(読んでいたのはバスの中だったのでエンジン音に紛れても唸れなかった)

 

伊坂幸太郎さんの作品をもっと読んでみたくなった。いい、伊坂・デビューだったと思う。

 

読書するとき、どうやって本を選んでいるのという質問をたまに受ける。私は、マインドマップをひくように、同じ作家の本や巻末にある関連書籍を読んでいくことが多い。でもそればかりだとほんとうに同じような本しか読まなくなってしまう。

 

そういうとき、Hちゃんとのやりとりのようにパッと新しい「点」になる1冊が見つかるとたのしい。まるでトンネルを進んでいくと見える光のように思える。またいろいろ読んでいこっと。

 

それから忘れてはいけないのが、「ジャケ買い」したくなっちゃうこの表紙。

田中達也さんという、ミニチュア写真家の作品のようだ。ソフトクリームを登山道に見立てる。柿の種はボート。傾けたパソコンのキーボードは、河川敷。この人のことは、東京最終日に会った高校の友達が教えてくれた。

 

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なんて柔軟な発想力なんだろう!さっそく、インスタグラムもフォローして見ている。

 

『残り全部バケーション』は、伊坂幸太郎さんの作品の魅力も、田中達也さんの作品の魅力も詰まったオイシイ作品だった。

 

 

残り全部バケーション (集英社文庫)

残り全部バケーション (集英社文庫)