『おちくぼ姫』

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そのおもしろさを、

わたしと筆がうまくお伝えできると

いいのですがーーー。

 

というまえ書きがむすばれ、物語が始まる。

 

田辺聖子 著 『おちくぼ姫』

 

千年前のシンデレラ物語として今に残る

落窪物語』を、田辺聖子さんが

やさしく現代訳してアレンジした作品だ。

 

『孤独な夜のココア』や

ジョゼと虎と魚たち』を昨年読み

田辺さん独特のやさしい表現や

ほろりとした関西弁の言い回しに

私はすっかり惹かれてしまって、

今年初めての買い物にこの本を選んだ。

 

日本の古典のシンデレラ、ということで

継母に虐げられて暮らす主人公おちくぼと

王子さま(貴族)が出会い、

恋をする…という大筋はお馴染み。

主人公を虐げる継母の醜さと、

その虐め方の滑稽さもそのままだ。

 

ディズニーアニメ映画のシンデレラでは

毎朝早く起きててきぱき働くシンデレラに

エプロンをつけてあげたり、

シンデレラから朝食のおこぼれをもらったり

シンデレラと仲良しの小鳥やねずみがいる。

『おちくぼ姫』でのその役割は、

おちくぼ姫の世話をする女・阿漕が担う。

阿漕の仲睦まじい結婚相手・帯刀もまた

阿漕をたすけ、おちくぼ姫を支える。

 

シンデレラのひみつ - 謎の国のありす

 

以前この記事でシンデレラの

「舞踏会に行きたいけれどドレスがない」

と言う言葉は彼女の自信の表れだ、

という本からの引用を載せた。

ここに、おちくぼ姫との違いを見た。

おちくぼ姫は何かと自分を下に見て、

阿漕に向かって自分を卑下する言動がある。

でもこれは日本風な奥ゆかしさとして

捉えることもできるな…と考えながら読んだ。

どんなに継母・北の方に辛く当たられても

清貧な暮らしをしている。

髪の毛は当時の美人の象徴である

黒く艶のある長い長い髪を保っている。

言葉には出さぬとも、誰に見せるでもなく

自分を美しく保とうとする姿勢も

実は自信の表れかもしれないし。

 

田辺聖子さんの綴り方では、

古典に馴染みのない若者向けに

当時の屋敷の間取りや結婚のしきたりに

ついて、本文中に説明がある。

だから前より少し当時のことに詳しくなれた。

また、歌のやりとりの現代訳も美しくて

読んでいてうっとりしてしまう。

これを中学生か高校生の時に読んでいたら

もっと古典の授業を楽しめたかも…。

 

 

人間のよろこびやかなしみ、

恋や憎しみなどは、

時代がかわってもおんなじなんだよ

 

田辺聖子さんが語りかけてくれる。

 

おちくぼ姫に恋をする少将も、

少将に仕える阿漕の夫の帯刀も、

もちろんおちくぼ姫もみなユーモアがあり

読んでいてすっかり好きになった。

 

でもいちばん「こうなりたい」と

思わせてくれたのは私は阿漕かな。

おちくぼ姫のいちばんの味方であり

機転がきいて女らしさのある人。

『おちくぼ姫』は見方によっては

阿漕のシンデレラストーリーとも言えるかも。

 

年末年始を跨いで読んでいた本を除くと

新年初めて読みはじめた本『おちくぼ姫』

またひとつ、読書の楽しみを教えてもらった。

 

 

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おちくぼ姫 (角川文庫)

おちくぼ姫 (角川文庫)

 

 

 

 

p.s.

先述した「シンデレラのひみつ」記事で

紹介した『シンデレラの教え』では

「糠福と米福」という、

東北地方に伝わるストーリーが

紹介されていて、これもいわゆる

日本のシンデレラストーリー。

他にも日本のシンデレラストーリーが

まだまだ見つかるかもしれないと

思うとますます面白い。

とてもベリー最高な夜、その3

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懐かしい人たちと、今年も

集まることができた。

高校生の頃、テスト期間終わりに

カラオケでばか騒ぎしたり、

時には真剣に語り合ったり、

卒業旅行を共にしたり、

20歳になってもけんかしたりした仲間たちと。

 

今年は全員の住んでいるところが

新潟東京大阪LAオレゴン…と

ますますバラバラになってしまって、

新潟に帰省してきた日本の3人と

LAで年越しを一緒に過ごすアメリカの2人

LINE電話をつないでの再会となった。

(時差もかなりあるのでちょっとだけね)

 

8種のビール飲み放題!なんていう

太っ腹なお店だったのにも関わらず、

ビールははじめの1杯のみだった

なんていうちょっと勿体ない私たちだった。

 

新潟に残っている私は

帰省したそれぞれに会えるけれど

東京と大阪となるとなかなか遠くて

2人はちゃんと話すのが久しぶりだった。

初めはお互い少し緊張していたようだけど

一杯目のビールグラスの底が

見えるころになれば、

あの頃の調子が戻ってくる。

 

いつもより思い出話は少なくて、

「いま」の話が特に多かったように思う。

時おり飲んでいるお酒をほめる。

関西弁がうつってきて、愉快な気分になる。

楽しくてたまらんわ…

 

寒空の下、イルミネーションを見ながら

二軒目のお店まで歩いた。

「今から行くとこはお通しがないから、

二次会にぴったりよ!」

なんてちょっとかっこつけてみる。

 

昨年も一昨年も、決まって

再会の時間の終わりが近づくと

なんだか悲しい気持ちになったけれど

今年はきっぱりしたものだった。

高校生だったのももう、3年前になる。

日常を共にしてきた人たちだったから

毎日会えないのはそりゃさみしいけれど

それぞれの大学生活だってもう

残すところあと1年。

 

会えないのは当たり前で、普段は見守って

たまにこうして会えるのがうれしいのだ。

 

今年こそ大阪に行きたいな。

私も!一緒に行こうよ

うちも、ユニバの年パス取らんとあかんな。

 

また、それぞれの1年が始まる。

新しい年の始まりに、

彼女たちに会えてよかった。

 

誰かが画面越し、とかではなくて

5人がリアルに揃えるのはいつだろう。

考え始めても答えは出ないけれど、

いつかその時が来るといいなと夢見ながら

ここで静かに待っている。

 

 

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回顧2016

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 2016年ももうすぐおわり。

今年も大みそかがやってきた。

 

何だかいつになく穏やかな年末を迎え、

銀杏をむいたり1か月ぶりの大掃除に

精を出したりしているところだ。

 

ブログを始めた2014年の漢字は「実」

2015年は「難」だった。

今年は何だろう、「波」にしとこっか。

 

成人式を迎え、また海外に渡り、

久しぶりに家族に叱られた。

今年は大学もアルバイトもよくやったと思う。

春からフランス語を勉強して、

秋に検定を初めて受けた。

書こう書こうと先延ばしにしているけど

大学の学園祭のコンテストにも挑戦した。

 

本も例年以上に読んで、

映画は今年は邦画が豊作だったので沢山観た。

ゲオにも通ってちょっと前の作品も楽しんだ。

 

ブログは、

年始は連続更新につとめたが途中で失速。

それでも書きとめておく習慣はついた。

 

いいことも悪いことも沢山あったし、

身体を壊しそうになったこともあった。

気持ちの持ちようだなと気付いたら、 

ちょっとは労ってやらないとと思うのだった。

 

1、2年生のときは一人暮らしに憧れて

なんとかならないものかと思っていたけれど

バス通学をはじめて、

実家で食べる食事を目一杯楽しむようになると

自宅生をやっていくのも幸せだと思った。

まだまだひとりで生きていけない。

 

冒頭の写真「so tired」は

東京駅のまん前のビルの中に入ってた

カフェの名前で、装飾が美しくて撮った。

まさに1年を終えるとこんな感じで、

疲れたけどいろんな色があって

美しかったなという感想を持っている。

 

今頭をかすめまくっているのは「就活」。

なんでこんなシステムがあるんだろうと

前はちょっと否定的に見ていたけれど

「考えごと大好き」の私には

人生の節目にいろいろ振り返ることができる

ツールや機会がたくさんあって

なかなか楽しいなと思っている。

これからはそんな「楽しいな」じゃ

済まされなくなってくるかもしれないし

自分をアピールするということは

あまりまだ上手に出来ないけれど、

とことん悩んだり、自分を磨いたりして

たぶんどっぷり浸かっていく予定だ。

 

今年もさまざまな人に支えられて

無事に1年をしめることができそうです。

ありがとうございました。

 

喪中のため新年のあいさつは控えますが

来年もどうぞよろしくお願いします。

いのちを見つめる読書

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師走のはじめ、祖父を亡くした。

入院していた病院に駆け付けた父からの不在着信とメッセージが届いたとき、私はスマホを見ることが出来ない場所にいた。90分後、スマホのある部屋に戻って来てやっと情報を受けとった。あっという間のことだった。

 

祖父はとても無口な人だった。

一緒に住んでいたのに会話を弾ませたことは少なかったけれど、私が小学生だったときに音読の宿題を聞いてくれたり、まだ祖父が背広を着ていたときは「じいちゃんがんばるからな」と私の頭に手を置いてくれたりした。火葬場で、私はそういうやさしい記憶だけを思い出していた。

 

無口な祖父から直接、いろいろなことを教えてもらうことができなかった。だけど親戚が集まって、思い出話を聞いていると仕事熱心な人だったことを知った。父はバイクに乗るのが趣味だけど、その趣味は祖父の影響がかなりあった、ということも。私がお酒をよく飲むのも、祖父に似ていると指摘された。

 

今までうちには仏壇がなかったので、祖父の使っていた和室に仏壇をつくって、今はそこで毎日祖父に話しかけている。朝と晩に手を合わせる。祖父に言葉が届くように、心を静かにする。こんなに本当は話すことがあったのだから、祖父が元気に生きているうちからもっと話せばよかった。

 

なにか予感があったのか、今年の私の読書ぶりを振り返ってみると「命を見つめようとする読書」をよくしていたと思う。

 

 

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『ラブレス』は2月に読んでからずっと忘れられなくて秋にもう一度読んだ。『氷平線』もそうだけど、桜木紫乃さんの作品は人の命や人生を静かにとらえている。川上未映子さんの『すべて真夜中の恋人たち』もまた、生きている人の心の動きを丁寧に描いていた。(主人公の職業は校閲。このあと「校閲ガール」というドラマが放送されて、校閲に対するイメージが広がった)

 

そして祖父が亡くなる少し前から読み始めていたのが、森博嗣さんの『スカイ・クロラ』シリーズだ。『すべてがFになる』と並んで森博嗣さんの著作の中では代表作とされ、ファンが多い。エッセイと自伝的小説(こちらもあとで紹介)、独立した長編の『ゾラ・一撃・さよなら』しか読んだことがなかったので、シリーズ作品を読んでみたかったのだ。

 

架空の傭兵組織に所属するパイロットたちの物語。戦闘機に乗って、空を舞台に敵と「ダンス」をする。墜ちたらそれで終わり。そして、墜ちなければ老いないままのキルドレたち。

 

なんでも良いから手近にあるものを蹴飛ばしてやりたかったけれど、僕はカウリングをゆっくりと撫でてやった。気持ちとは反対のことができるなんて人間って不思議なメカニズムだと思う。(『ナ・バ・テア』より)

 

僕たちに神はない

僕たちが信じるのは、メカニックと、操縦棹を握る自分の腕だけだ。(『ナ・バ・テア』より)

 

 誰が誰と戦っていて、それがどんな理由なのか、そういったものを言葉で覚えることが、戦争を理解することだろうか。それは絶対に違う。(『クレイドゥ・ザ・スカイ』より)

 

エッセイで見る、森さんの鋭い考え方が主人公たちに引き継がれているようだった。無駄な描写がなく、詩的で神秘的な小説だった。(ありふれている感想かもしれない)

 

バイクが好きだった祖父は、今頃どこかを旅しているんじゃないだろうか。うちの周りにいるとは思えない。シリーズ全てを読んで、空の向こうにいる人に思いを馳せた。

 

「学問には王道しかない」という言葉が印象的で、夏目漱石の『こころ』をちょっと思わせる、春に読んだ『喜嶋先生の静かな世界』。それから夏休みの終わりに読んだ、自伝的で父と母の死にまつわることが丁寧に書かれた『相田家のグッド・バイ』。どちらも森博嗣さんの著書である。

 

命を見つめなおし、心を整理するきっかけになりそうな本をたくさん手に取っていた年だった。心だけでなく、流れる時間も整理しなければと思って少し過ごし方も変えてきていた時だった。我ながらこのチョイスが不思議だった。

 

今夜は手を合わせて、祖父になんて語ろうか。

あんまり夜遅くになるとお酒を飲みだすかもしれないから、早く帰ったほうがよく聞いてもらえるかもしれないな。

 

 

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ナ・バ・テア (中公文庫)

ナ・バ・テア (中公文庫)

 

 

 

ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)

ダウン・ツ・ヘヴン (中公文庫)

 

 

 

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

フラッタ・リンツ・ライフ―Flutter into Life (中公文庫)

 

 

 

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

クレィドゥ・ザ・スカイ―Cradle the Sky (中公文庫)

 

 

 

スカイ・クロラ (中公文庫)

スカイ・クロラ (中公文庫)

 

 

 

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

スカイ・イクリプス―Sky Eclipse (中公文庫)

 

 

 

1/72 スカイ・クロラ 散香マークB 函南優一機

1/72 スカイ・クロラ 散香マークB 函南優一機

 

 

ありがとう、ELLE girl ~わたしのit girl~

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書店の棚に

ELLE girlの最新号を見つけると嬉しくなる。

 

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ELLE girl は、今までも何度か

このブログで紹介してきたお気に入りの雑誌だ。

 

 

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最新号は赤い表紙とピンク色の表紙があって、

赤い表紙のほうにはREVLONのリップがついてくる。

 

店頭で色が選べるということだったけれど、最新号を手にレジに並んだ日の私はとても急いでいて、もと・平積みされていましたという感じに置かれた「ラスイチ」を手にしたのだった。家に帰って開けてみると、新しい手帳の色(とても気に入っている)と同じピンク色のリップだったのでよかった。

 

ELLE girlの最新号の特集は「おしゃれガール図鑑」。

今、知っておくべきイットな132人が紹介されている。

 

it girlの特集といえばELLE girl が時折りやっているもので私はとても好きだ。世界で活躍する日本人女性(だいたいモデルだった)を知るのも楽しいし、初めにこの特集を目にしたころは東京が世界でこんなに有名な都市だってことを知らなかった。

 

ELLE girlでおなじみの中条あやみさん、森星さんを筆頭に

 

 

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こちらの記事で「髪の毛を伸ばしてたときのモチベーション」として挙げていた萬波ユカさん、20歳になるときに長かった髪をばつんと切ってヘアドネーションに協力したという三吉彩花さん、そしてインスタグラムで目にしたことのあるような注目されているおしゃれユーザーの名が並ぶ。

 

イットガールの活躍はモデルの才能にとどまらない。

若者のカルチャーを牽引する存在や、みんなで考えていきたいことを提唱する存在、いろいろなタイプがいて楽しい。

 

それから目をみはったのは、ご当地インフルエンサーのコーナー。新潟市の方も紹介されていて、私も訪れたことのあるようなお店も載っていた。初めは海外セレブやスーパーモデルの名を知るツールとして親しんでいたこの雑誌が、ここまで身近なことを特集してくれるなんてと嬉しくなった。

 

it girl特集の他には、おなじみのセレブ特集や「1月号」らしい星占いのコーナーなど、こちらも楽しい。

 

 

次号はいつ出るのかなと最後のページをめくったとき、衝撃が走った。

 

「エル・ガール読者のみなさんへ」というタイトルを目にして嫌な予感がしたのだ。休刊のお知らせだった。今までも少しずつ趣向を変えたり、お休み期間が数カ月あったり、雑誌のサイズそのものを変えたりと変化の兆しはあったけれど、まさか休刊するなんて思っていなかった。ずっと見守ってきた大好きな雑誌だったので、ショックだった。

 

今後はエル・ガールオンラインが情報の発信を引き継ぐということだったので、こちらは引き続きチェックしていきたいと思う。

 

けれど!その前に!

この「イットガール特集」を読んでいて、もし私がELLE girlの編集部にいたらぜひ紹介したいと思っていた素敵なモデルさんがいる。

 

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http://www.covergirl-ent.jp/gallery.html?id=98

(写真は事務所のHPより)

 

中島沙希さん。

私と同い年の21歳だ。

 

今年の初めに山口小夜子さんの映画を観に行ったとき、インスタグラムのハッシュタグで検索した時にたまたま中島さんのページにたどり着いた。

 

中島 沙希さん(@saki_nakashima) • Instagram写真と動画

(インスタグラムはこちら)

 

黒髪が美しいし、撮影風景の一コマでみせる眼差しがキレイだなと思った。インスタグラムを見ていてすっかりファンになり、投稿を楽しみにしている。いつも和気あいあいと、周りに感謝しながら仕事を楽しんでいる様子に元気をもらえる。

だからELLE girlの「イットガール特集」の文字を見たとき、中島さんの顔がぱっと目に浮かんだのだ。

 

 最近活動拠点を福岡から東京にうつしたばかりということで、これからの活躍がますます楽しみ。

 

ELLE girlは休刊してしまうけれど、ELLE girlを購読して親しんだSNSのメディアや、そこから新しい世界が広がったりエネルギーを感じたりということはこれからも私の中で生きていくことと思う。

 

ありがとう、ELLE girl!!

 

 

 

 

「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」

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(一番下まで読むのはおすすめしません)

 

2014年、大学に入って初めての夏休み。

初めて1人で乗る新幹線。

ホームにつく前にふと、本を読もうと思い立ち

キオスクに寄って手に取った本。

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

 

京都の街並みってきっとこういう色をしているのかな、絵美ってきっとこんな感じでとても美しい女の子なんだろうな…と想像しながらページをめくった。「私はラノベを買ったのだろうか」と思うくらいすらすら読めたけれど、新潟駅を出発して2時間、埼玉あたりで迎えたクライマックスに気付けば涙してしまった。「いやいやいやいや、列車で泣くなんてこまるわぁ」と思って、相席してきていたおじさんに気付かれないようにするのに必死だったことをぼんやり思い出す。

新幹線で読んだ本、ということもあって忘れられない。

「泣ける」「2度読み必須」なんてコピーが付いて回る。口に出すと薄っぺらくなってしまう気がして、今までブログでもこの作品を取り上げることはなかった。

 

私が手に取ったころ初版だった「ぼく明日」も重版を重ね、ついに映画化された。キャストが発表されたときは小松菜奈さんの映画出演が他でも多数控えていたので、「また小松菜さんかいな」という感想だったけれど、私はずっと楽しみにしていた。

 

映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』オフィシャルサイト

(あらすじはオフィシャルサイトにて)

 

「一緒に映画を観に行く機会ナンバーワン」、すっかり映画仲間の友人と一緒にポテトとジュースを買って、スクリーンに向かった。2人とも原作はもちろん読破済み。一緒に観に行った映画で夏ごろから必ず予告編が流れていたので、セリフもかんぺきだった。

 

上映が始まってしばらくは、登場人物たちが新しい動きをとる度に私たちは顔を見合わせて笑ったり、小声で「やばいやばい」なんて言っていたけれど、後半はお互い黙って、鼻をすんすんやる音に「あ、泣いているな」という気配だけ察し合うだけとなった。

 

原作にヒロイン・福寿愛美についての詳しい描写はあるけれど、彼女の美しさ(外見も内面も)を体現するのに、小松菜奈さんはぴったりだった。誠実そうな南山高寿も、福士蒼汰さんらしかった。

 

結末も、「愛美の秘密」も知っていたはずなのに、どうしてこんなに涙が出てくるんだろうってくらいとにかく私はぼろぼろだった。イヤー困った。2人のどちらかに感情移入している可能性もあるけれど、2人を見守る1人の人間として、涙せずにいられない、といった感じだったか。映画を観て涙が出てくるという経験は、べつに泣ける作品でもないよと言われているものでもふとしたことでほろり…というのを含めてけっこうあったけれど、こうもぼろぼろとしてしまったのは他に記憶がない。

 

エンディングで流れるback numberの「ハッピーエンド」も、映画の内容を反芻しながらしみじみ聴きたい1曲だった。

 

「秘密」を抱えたこの作品、もう読んだことある・観たことあるという人も多いかもしれないけれど、やっぱりねたばれは書けない。でも、恋愛映画や小説を読むときにありがちな「こうなりたい」という思いを、高寿と愛美2人に向けることはできなかった。(いい意味でね)

 

行ったことのない京都の街並みがもつ佇まい、そこで大学生活を過ごすということ、そういう想像も膨らませて楽しめる作品だと思う。そしてやっぱり、高寿と愛美2人の気持ちに寄り添いながら、自分だったらどうやってこの「秘密」を乗り越えられるだろう…と余韻に浸りたい作品だ。

 

普段あまり小説を読まない母も、「ぼく明日?っていう本、気になるから持ってたら貸してくれない?」と声をかけてきた。小説が面白かったから映画を観に行きたいって言い出したらどうしよう。(いい意味でね)

 

 

 

 

 

 

 

ヒント

 

時空の旅 (SFセレクション 1)

時空の旅 (SFセレクション 1)

 

 

小学生の時に学校の図書室で借りて読んだ

SFセレクション・時空の旅。

たしか漫画で描かれていた一篇で、

特殊なバリアのなかにある空間に行ってしまうと

二度とこちらの世界と一緒に流れる時間を

過ごせなくなるという話があった。

愛しあう2人がその空間に行ってしまうという結末。

その空間はこちらの世界から、まるで

透明エレベーターに乗る人を見るように

ふつうに見ることができる。

私はあれを読んでなんだかせつなかった。

母と手帳会議をした

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最近手帳のことばかり書いているので、

趣味は手帳ですって言っても

いいのかもしれないと思い始めた。

でも「手帳」ってなんだろ?

 

趣味はサッカーです、だったらプレイする方か観てる方かどっちもか、と説明すれば分かってもらえる。読書だって書を読む、名詞が同時になっているので一言で済んでしまう。でも、手帳ですって説明しづらいなと思う。私は雑誌で手帳の特集を読むのが好きだし、実際に書くのも好きだ。秋に様々な売り場を回って自分にとってしっくりくる手帳を心ゆくまで選ぶのも好き。

 

雑誌には有名人や業界人の手帳の使い方が紹介されている。お笑い芸人の〇〇さんはウィークリーページにネタを走り書きしていますとか、営業部の〇〇さんはフリースペースに目標を書いたり、手帳を使い分けて資格取得に向けての勉強を記録する手帳も使っていますなんていうのがある。一般の人の手帳がどんなふうか見たかったらTwitterやインスタグラムでタグの検索をする。

 

#手帳会議 というタグをたまに見かける。

 

ひとり早朝のカフェで、お気に入りのラテを飲みながら来年の手帳の使い方を考えている投稿には、泡のたつラテとまっさらな手帳の写真。「手帳仲間」と集まって、情報交換したという投稿も目立つ。

 

私は来年ほぼ日手帳(カズン)を使うことにしたが、母もほぼ日デビューした。ちゃんと書けるか自信がないと言っていたので、「#ほぼ日 タグの検索していろいろ写真を見ると楽しいよ」と話した。

 

朝、混みだす前のスターバックスで冬らしいドリンクを頼んで手帳を広げて「手帳会議」をすることにした。

 

母は裁縫や料理を趣味としている。家事としての料理はもちろん、お菓子やちょっとした新メニューを考えるのが好きだ。1年の中で、裁縫か趣味としての料理のどちらかでもしない日はないのではないかというくらい染み付いている趣味だ。

 

「あれを作ろう」と思いついたけれど、いつの間にか半年経っている。刺繍糸やマスキングテープを集めて見本集を作りたいと言っていたのに、集めっぱなし。「やりたいことはたくさんあってやろうと思えば出来ることばっかりだけど、なぜか忘れたりしてできないのよね」と悩んでいる様子だった。

 

ほぼ日手帳の巻末には、100の項目と数字の横に1行分空いたスペースのあるページがある。私が2015年に書いていた「100の夢リスト」みたいなページだ。もともと数字が印刷されているので揃って見えてきれいだ。

 

母にも夢リストのことを話して、突拍子もないように思える夢と(突然世界1周するとか)、2017年に作りたいもの・仕上げたいものを混ぜてこのリストに書いてみたらどうかと提案してみた。

 

まっさらのほぼ日手帳を母とじっくり見てみると、はじめに年間が見渡せるページがあったり、月のはじめに罫線でできたメモのスペースがあったり、1日1日のページにもよく見ると時間軸や5つ分のチェックリストがあったりするのだ。

 

年間が見渡せるページはインデックスとして、「〇月〇日 〜〜旅行2日目」のようにするとそのページのもつ検索性があがる。月のはじめにはその月の目標を書き、下のスペースにはその月の終わりの反省を書く。1日1日のページの時間軸はそのまま使えるし、チェックリストは買い物メモなんかにしてもいいと思う。

 

「日記や目標を書くにしても、マイナスなことはなるべく書きたくないのよね」という母からの意見があった。たとえばテレビなどを見ているといつの間にか眠ってしまうという悩みがあるとする。本当は読書の時間もとりたいし、スマホやテレビなどの光が夜の目には良くないこともわかっている。でも、ついついしてしまう…。

 

それで目標として「〜しない」と書いてしまうのはなんだかマイナスなイメージが染みつき、目標を守れなかった日はいい気分がしない。だから、「眠る前は大きな電気とディスプレイを消し、手元のライトだけをつけて、読書を楽しんでから眠りにつく」というようなことを書くとなんだか挑戦したくなってくる。

 

きちんと毎日1ページを埋められるかどうか、それは親子ともども心配なことだ。でも、「7行日記」や「自己流7つの習慣」などを応用すれば、毎日必ず何かしら書けるのではないかなと思う。

 

ほぼ日デビューをする母と、手帳の楽しい使い方について共有することができた朝だった。